「後天性免疫不全症候群を抱えながら自宅で生活できるの?」
「訪問診療はどんなサポートをしてくれるの?」

後天性免疫不全症候群患者さんとそのご家族のなかには、このような疑問を感じている方もいるのではないでしょうか。
訪問診療は、後天性免疫不全症候群患者さんが、住み慣れた自宅での生活をサポートする心強い存在です。

この記事では、訪問診療が後天性免疫不全症候群感染症患者さんへ行うサポート内容を詳しくお伝えします。
ぜひ、最後まで読んで参考にしてみてください。

後天性免疫不全症候群の訪問診療:具体的なサポート内容

後天性免疫不全症候群(以下、HIV感染症と記載)は、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)に感染することによって生じる状態のことです。
適切な治療を行わなければ、全身性の免疫不全により日和見感染症(※)や悪性腫瘍を引き起こします。

近年では、治療薬の開発が進んでおり、早期に薬物治療を行うことで免疫力を落とさず、通常の生活を送れるようになってきました。

※日和見感染症:健康な人には害のないような弱い細菌やウイルスに感染し、症状が出ること

訪問診療は、HIV感染症患者さんのなかでも、頻回の通院が難しい方へ次のようなサポートを行います。

  • 体調不良時の対応
  • 日常生活での困りごとの対応
  • 専門医との連携
  • 症状に合わせた在宅医療サービスの検討

サポートの内容を詳しくみていきましょう。

体調不良時の対応

HIV感染症患者さんのなかには、合併症がなく通常の生活を送れる方もいれば、運動障害や認知障害などの後遺症を抱える方もいます。
このような方々は風邪や腹痛など、日常的に起こりやすい病気にかかった際に、病院に受診する負担は大きいものです。
訪問診療を導入すると、定期的な診察とともに体調不良時に往診してもらうことができます。

多くの訪問診療では、以下のようなサポート体制を整えています。

  • 定期的な診察:一般的に2週間に1回程度 
  • 対応可能な検査:血液検査、尿検査、心電図など 
  • 急変時の対応:24時間365日の電話相談対応、往診

通院の負担なく、自宅で必要な検査や治療を受けられることは大きなメリットといえるでしょう。

日常生活での困りごとの対応

体調不良時だけでなく、日常生活における「困った症状」も訪問診療に相談できます。
たとえば「眠れない」「お通じが出ない」「皮膚にかゆみがある」などです。
訪問診療は定期的な診察の際に、患者さんやご家族の困りごとを解消できるように努めています。
HIV感染症に関することだけではなく、さまざまな症状に対応できることがあります。
どんな些細なことでも相談してみてください。

専門医との連携

HIV感染症患者さんのなかには「専門的な治療を受けなくてもいいの?」と不安を抱える方もいるでしょう。

訪問診療を導入後も、HIV感染症の専門医との連携は続けることができるので、安心してください。
専門医(病院の主治医)の定期的な通院と、訪問診療の併用も可能です。

患者さんの自宅での様子、病気の治療、今後の方針などを情報共有し、医療面からサポートします。

症状に合わせた在宅医療サービスの検討

HIV感染症患者さんの中には、合併症や他の慢性疾患の影響により、日常生活に影響が出る症状や障害を抱える方も多いです。
訪問診療では、患者さんの病状に合わせて必要なサポートを検討し、提案していきます。
たとえば次のような在宅医療サービスがあります。

  • 日常生活や身体的なケアをサポートしてほしい:訪問看護・訪問介護
  • 運動機能に障害があるが動きや筋力を維持したい:訪問リハビリテーション
  • 薬の管理に不安がある:訪問薬剤

患者さんやご家族の希望に寄り添いながら、サービスの導入や調整、連携を行います。
より良い生活を送るために、在宅医療サービスを有効に使いましょう。

後天性免疫不全症候群患者の訪問診療における心理ケア

医学の進歩によりHIV感染症の治療が進んでいる一方で、病気に対する理解不足や偏見がまだ残っているのが現状です。
理解を得られにくい現状に対し、つらさや孤独を抱えている患者さんも少なくありません。
またHIV感染症だけでなく、精神疾患や認知機能の障害を抱える患者さんもいます。

訪問診療は、患者さんの身体面だけでなく、精神面のケアも大切にしています。

ただ精神疾患や認知機能の著しい低下に対しては、専門的な治療が必要な場合があります。
そのようなときには、内科と精神科の訪問診療を並行して受けることが可能です。

患者さんが穏やかに生活できるようサポートしますので、安心してご相談ください。

後天性免疫不全症候群の訪問診療におけるプライバシー配慮

HIV感染症に対する社会的な理解不足から、周囲の目を気にせざるを得ない状況に立たされている方もいます。
なかには家族や親戚に病気のことを詳しく伝えられない方もいるでしょう。
訪問診療では、患者さんの想いを大切にしたいと考えています。

「病気をどのように受け止めているか」「ご家族や親しい人に病気のことをどこまで伝えているか」など、あなたの想いを聴かせてください。

まとめ

最近では、HIV感染症を抱えていても、正しく薬物治療を行うことで普段通りの生活が送れるようになってきました。
訪問診療は、体調不良時の対応や専門医との連携で医療面をサポートします。また精神的ケアやプライバシーへの配慮も大切にしています。
心身ともに穏やかに過ごせるようにサポートしますので、あなたの想いを聴かせてください。

この記事が、訪問診療の導入を考えているHIV感染症患者さんやそのご家族の参考になれば幸いです。
HIV感染症患者さんの自宅療養をサポートする「訪問看護」の役割を詳しく解説した記事も、ぜひ参考にしてみてください。

関連記事:「後天性免疫不全症候群患者さんへの訪問看護の内容|穏やかな生活をサポート」

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