透析を必要としない保存期慢性腎臓病では在宅医療での治療が可能です。しかし慢性腎臓病は進行する病気のため、患者さんによっては在宅医療をしている間に透析が必要な状況（末期腎不全）になってしまうことがあります。
在宅医療をしている間に末期腎不全に至った場合の問題点について詳しく解説します。

１　末期腎不全について

１　末期腎不全とは
末期腎不全とは腎機能が低下し回復の見込みがなく、自身の腎臓の機能では生命の維持ができなくなった状態のことを言います。生命を維持するためには腎移植か透析療法が必要です。血液検査の値だけで透析が必要かどうかを決めることはできませんが、腎機能が健常者の概ね10%程度以下となると透析が必要となります。

２　どんな症状が出るの
末期腎不全になると、
・本来尿から排泄されるべき毒素が蓄積することによって食思不振や意識障害が起こる『尿毒症』
・体のミネラルバランスが崩れ、不整脈や心停止が起こりえる『電解質異常』
・過剰な体液による『心不全』
・エリスロポエチン（ESA）製剤の反応性が低下して貧血が改善しないといった症状が出現します。

３　透析しないとどうなるの
末期腎不全となって適切な治療がなされないと、多くは2~3週間以内に亡くなってしまいます。

４　どんな治療があるの
腎移植または透析療法が必要です。在宅医療を受けている高齢の患者さんの多くは腎移植の適応になりません。そのため透析療法をするか・しないか、透析療法をするなら血液透析か・腹膜透析かを選択する必要があります。

２　在宅医療をしている患者さんにとっての透析療法

１　血液透析
血液透析では週3回、一回3~6時間程度の治療を受けます。治療を受けるには専門のクリニックに通院する必要があります。昨今では送迎付きのクリニックも増えてきています。

２　在宅医療をしている患者さん特有の問題
多くの在宅患者さんは身体能力が低下していて通院が困難な状態にあります。血液透析を外来で行う場合、誰が送迎までの介護（身支度や送迎バスまでの移動介助）を行うか、送迎可能なクリニックが近隣にあるかどうか等を検討しなければなりません。
寝たきりで移動が全くできない場合、在宅医療の継続を断念して療養病院へ入院する方もいらっしゃいます。その場合、現実的には一生入院を継続することとなります。

３　腹膜透析
腹膜透析では総合内科の腎臓内科に入院しお腹にカテーテルを入れます。そのカテーテルから専用の腹膜透析液を注入し一定時間留置した後に新しい透析液と交換します。この作業を一日3~4回程度行います。腹膜透析は原則的に毎日行う必要があります。

４　在宅医療をしている患者さん特有の問題
腹膜透析は毎日治療を行いますが、これを自宅でご自身もしくは同居の家族が行います。仕組みを理解し毎日忘れることなく続けられるか、そのような環境が整えられるかどうかがカギとなります。
また、血液透析ほどの頻度ではありませんが、腹膜透析でも治療に精通した医師のもとに通院する必要があります。通常月一回程度ですが、何らかのトラブルが生じた場合はさらに高頻度となります。
近くに腹膜透析対応可能な訪問診療クリニックがある地域では、訪問診療のみで腹膜透析を行える可能性があります。

３　透析を導入しないということ

このように、透析が必要な末期腎不全に至ると患者さんやご家族の生活環境が大きく変わってしまいます。場合によっては、在宅医療の継続を断念して入院する、もしくは施設に入所する等の対応が要求されます。
これらの問題を勘案し腎不全で亡くなることがわかっていても、透析は行わずに在宅医療を続ける方もいらっしゃいます。

まとめ

在宅医療を続けている患者さんにとって、保存期慢性腎臓病から末期腎不全への進展は非常に大きな問題です。居住している地域の医療体制や患者さん自身の価値観に照らし、後悔のない選択をしていただきたいと、日々願っています。

腎不全　治療選択とその実際-日本腎臓学会

いかがでしたでしょうか？
今回は「在宅医療での末期腎不全を考える」について、ご説明させていただきました。お近くの在宅医療対応の医療機関はコチラから検索可能です。
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