多系統萎縮症では、進行性の難病とされています。症状の進行に戸惑いながら意思決定を求められる場面があるので、患者さんとご家族はさまざまな困難に直面します。

この記事では、多系統萎縮症の訪問診療について、進行する症状への対応や、提供される医療サービスなどを紹介します。おおまかな見立てを持ち、症状と付き合いながら自宅で過ごすために、ぜひ最後までお読みください。

多系統萎縮症の訪問診療:安心して自宅で過ごすために

多系統萎縮症は脳や脊髄の一部に異常をきたす進行性の病気です。患者さんの生活の質を維持するためには、定期的な医療サポートが不可欠です。

医師が定期的に自宅を訪問し、診察や治療を行う訪問診療は、そんな患者さんとご家族の支えとなる重要な医療サービスです。

訪問診療のメリット

  • ・自宅にいながら病気の進行に応じた医療を受けられる
  • ・生活環境に合った治療方針の提案を受けられる
  • ・通院の負担を軽減できる
  • ・ご家族も含めた包括的なサポート など

多系統萎縮症とは?進行する症状への対応

多系統萎縮症では症状の進行に伴い日常生活にさまざまな困難が生じるため、早期から適切な対応が求められます。

以下では、主な症状と対応方法について説明します。

1.構音障害への対応

言葉が途切れたり不明瞭になったりします。

ご家族は聞き取りづらく、患者さんは伝えたいのに伝わらないという状況になり、お互いにコミュニケーションが負担となりやすいです。

そのため、残っている機能の維持に努めつつ、会話が困難な場合に備えて、パソコンやタブレットといったコミュニケーションツールの導入を検討します。

※自治体による補助や機器の貸出あり

2.呼吸障害への対応

睡眠時の喘鳴や無呼吸などの呼吸障害が、早期から認められることがあります。

このような場合、鼻マスクを使って呼吸を補助する非侵襲陽圧換気療法が導入されます。

また、突然死の予防のために、気管切開をすることもありますが、呼吸障害の原因には呼吸中枢の障害によるものもあるので、気管切開しても突然死の可能性は残ります。

大切なのは、主治医から十分に説明を受けたうえで、あらかじめ人工呼吸器を装着するか否かについて話し合っておくことです。

3.嚥下障害(栄養障害)への対応

嚥下障害によって、栄養摂取が困難になるだけでなく、誤嚥性肺炎のリスクも高まります。

嚥下機能の評価を行い、リハビリテーションや食事形態の調整が実施されます。また、嚥下が困難な場合には、経鼻経管栄養や胃ろうなどが提案されることもあります。

適切な栄養を摂取することで、体力の維持を図れます。

4.排尿障害への対応

自立神経の障害で起こる症状で、頻尿や尿失禁、尿閉(排尿ができない)などが含まれます。

対応として、排尿日誌を活用した排尿パターンの把握や薬物療法が提供されます。必要に応じて自己導尿や膀胱カテーテルを使用し、患者さんが快適に過ごせるようサポートが行われます。

5.起立性低血圧への対応

立ち上がった際に血圧が急激に低下し、めまいや失神を引き起こすことがあります。

生活指導として、ゆっくりと立ち上がることや弾性ストッキングの着用が勧められます。また、薬物療法が併用されることもあり、症状のコントロールが図られます。

多系統萎縮症の訪問診療で受けられる医療サービス

訪問診療では、定期的な健康チェックや薬物療法の管理、さらには専門医との連携など、幅広いケアを受けられます。

定期的な健康チェック:病気の進行を早期発見

多系統萎縮症は進行性に悪化することが多い病気であり、早期発見と対応が求められます。医師が定期的に患者さんの健康状態を確認することで、病気の進行や新たな症状の出現をいち早く察知し、適切な治療を行うことができます。

薬物療法の管理:患者さんの症状を適切にコントロール

薬物療法は症状をコントロールするための手段の1つです。
現在のところ、病気自体を治す薬はありません。しかし、症状をコントロールすることで、日常生活の負担を軽減することができます。

専門医との連携:治療効果の最大化と生活の質の維持・向上

複数の専門分野にまたがる病気であるため、神経内科医やリハビリテーション科医などの専門医との連携が重要です。
新たな問題が迅速にそれぞれの専門医に共有され治療につながることで、治療効果を最大化できます。

多系統萎縮症の訪問診療を提供する医療機関の選び方

訪問診療医の探し方と医療機関の選び方について、解説します。

訪問診療医の探し方

主治医が訪問診療を行っておらず訪問診療医を探す必要がある時は、以下の4点が参考になります。

  • 主治医や医療機関への相談
  • 難病相談支援センターの講演会や研修会への参加
  • 患者家族会の交流会や講演会への参加
  • 医療情報サイトの閲覧 など

これらの活用で、訪問診療医にアクセスしやすくなります。さらに、患者さんやご家族の口コミも、信頼できる訪問診療医を見つけるための重要な判断材料になるでしょう。

医療機関の選び方

医療機関を選ぶには、いくつか考慮する点があります。

  • 専門医が常勤しているか
  • 多系統萎縮症の特性に合ったサービス内容か
  • 対応地域や診療時間はどうか など

これらの点を評価して、最適な医療機関を選びましょう。

多系統萎縮症の訪問診療に関するよくある質問

Q1:緊急時の対応は?

進行する症状によって、緊急対応が必要な場合があります。

まずは緊急連絡先に連絡し、指示を仰ぎましょう。通常、緊急時の対応計画を事前に立てられており、患者さんとご家族が対処できるようサポートしてくれます。

例えば、呼吸困難や急激な血圧低下が発生した場合には、適切な医療機関に速やかに搬送する準備が整えられているはずです。日常的に使う医療機器や薬剤についても、緊急時の対応を想定して、使い方や備蓄を確認しておきましょう。

Q2:訪問診療の頻度は?

個々の症状や進行状況によって異なります。一般的に、病気が進行するにつれて、訪問診療の頻度が増加する傾向があります。

主治医との相談によって、体調や生活環境に最適なスケジュールが組まれます。

まとめ:医療のサポートを受け、症状と付き合いながら過ごしましょう

医療のサポートを最大限活用することで、患者さんやご家族が疲弊することなく、安心して自宅療養を送ることが可能です。

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