筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんとご家族にとって、訪問看護は欠かせないサポートです。
しかし、
「具体的にどんなケアを受けられるの?」
「訪問看護は本当に必要なの?」
という疑問をお持ちの方も多いでしょう。
この記事では、ALS患者さんへの訪問看護が提供する具体的なケア内容と、その重要性について詳しく解説します。
病気の進行に合わせて必要なケアがどのように行われるのか、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
目次
ALSの主な症状とケア|訪問看護のサポート内容
ALSは、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気です。
病気が進行すると呼吸の筋肉を含め全身の筋肉がやせて力が入らなくなるため、身体を動かすことが難しくなり、おもに以下の症状が現れます。
- ・呼吸機能の低下
- ・筋力の低下
- ・嚥下機能の低下
それぞれの症状とケアについて詳しくみていきましょう。
呼吸機能の低下:呼吸リハビリテーション
呼吸の筋肉がやせると、息切れが起こったり、十分な呼吸ができなくなったりします。
そこで、呼吸機能の維持を目標に呼吸リハビリテーションを行います。
呼吸リハビリテーションとは、呼吸機能が低下した患者さんの呼吸を楽にする治療法です。
ALS患者さんへの呼吸リハビリテーションは、体調や症状の進行に合わせて行われ、以下のような方法があります。
呼吸リハビリテーションの方法 | 内容 |
胸郭可動域訓練 | 胸郭を広げ、深い呼吸をするための訓練を行う |
胸部温罨法 | 呼吸に関わる筋肉を温め、筋肉の緊張を和らげる |
排痰法 | 身体の向きを変えて痰を出しやすい位置に移動させたり、効果的な呼吸や咳の方法で痰を出しやすくしたりする |
これらのケアは、看護師だけでなく、リハビリテーションの専門知識をもつ理学療法士も一緒にサポートします。
筋力の低下:筋力の維持
手や腕の筋肉がやせると、力が弱くなり、身体が動かしにくくなります。
そのため、患者さんの残存している機能を維持するためのリハビリテーションを行います。
例えば、腕や足の固まった筋肉を和らげる可動域訓練を行ったり、身体の動きを確認し適切な補助器具を選択したりします。
特に「排泄」に関して困難を抱える患者さんが多いです。
ALSはトイレ歩行が難しくなりますが、感覚は残っており、尿や便をためるための機能も比較的保たれます。
病状の進行に応じて、ベッド上での排泄やおむつ、尿道留置カテーテルの使用などを検討します。
「これまで自分でできていたのに」と戸惑う方もおられるでしょう。
できるだけ患者さんの力を活かして日常生活が送れるようにサポートします。
嚥下機能の低下:栄養の管理
舌やのどの筋肉も少しずつ弱くなるため、食事や水分を口から摂ることが難しくなります。
患者さんの嚥下機能に応じて、対応を検討します。
飲み込みにくさがある患者さんには、食べ物の形態や介助方法を工夫し誤嚥の予防に努めることが大切です。
以下は対応の一例です。
- 【飲み込みやすい食事の形態】
- ・柔らかく水気の多いもの
- ・淡泊な味のもの
- ・冷たいもの
- 【介助方法】
- ・少量ずつ口に入れる
- ・飲み込むときに顎を引く
嚥下機能の低下が進行し、食事や水分が口から摂れなくなった場合は、胃ろうや経鼻胃管など医療機器を利用して胃に栄養を送る選択肢があります。
ALSは体重が減ると病状が悪化することが知られており、体重を維持することが重要です。
患者さんの状態に合わせて、栄養状態を維持できるようサポートします。
ALS患者さんへの訪問看護による精神的ケア
ALSは進行性の難病であり、患者さんとご家族に大きな不安と戸惑いをもたらします。訪問看護では、身体的なケアだけでなく、心のケアも重要な役割です。
患者さんの気持ちに寄り添う
ALSは進行性の病気であり、身体が思うように動かせなくなります。一方で、視力や聴力、感覚は問題ないことが多いため、患者さんの精神的な負担は計り知れません。
日々変化していく身体機能への不安、将来への懸念など、患者さんはさまざまな感情を抱えています。訪問看護師は、これらの思いを丁寧に聴き、受け止めます。
「どうして自分がこんな病気に…」
「これからどうなるんだろう…」
こうした不安や悲しみは自然な感情です。訪問看護師は、患者さんの気持ちを尊重しながら、一緒に前を向いて生きていく力を支えます。
病状の進行により話すことが困難になった場合は、「文字盤」などのコミュニケーションツールを使用して、患者さんの思いに寄り添ったケアを行います。
ご家族へのサポート
患者さんを支えるご家族も、大きな負担と不安を抱えています。
訪問看護では、ご家族の心身の健康にも注意を払い、以下のようなサポートを行います。
- ・ご家族の思いを傾聴し、気持ちを共有する場を提供
- ・介護の方法や工夫についてアドバイス
- ・レスパイトケアの提案と調整
- (一時的な休息の確保:ショートステイ、レスパイト入院など)
- ・他の支援サービスの情報提供と連携
ご家族が心身ともに健康であることが、患者さんのより良いケアにつながります。
まとめ
ALS患者さんへの訪問看護では、病状の進行に合わせてケアを行います。
訪問看護は、訪問診療やヘルパー、ケアマネジャーなど多職種と連携しながら、患者さんとご家族の思いに寄り添い、生活全体をサポートします。
訪問看護の利用を検討されている方は、主治医やケアマネジャーに相談してみてください。具体的な利用方法や利用の流れについて詳しく説明してもらえるでしょう。
この記事が、ALS患者さんへの訪問看護のケアについて知りたい方のお役にたてれば幸いです。
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