「ALSが進行しても、今までどおり自宅で過ごせるの?」
「訪問診療って具体的に何をしてくれるの?」

このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんとご家族にとって、訪問診療は心強い味方です。 ALSの症状は人それぞれですが、訪問診療を利用することで、自宅で適切な医療を受けながら生活することができます。患者さんやご家族の思いに寄り添った医療を実現できるのが訪問診療の強みです。

この記事では、ALS患者さんへの訪問診療の内容や在宅医療での治療方針についてお伝えします。
自宅でどのような診察や治療が行われるのか、ぜひ最後までお読みください。

訪問診療はどんなことをしてくれるの?
ALS患者さんの診察内容

筋萎縮性側索硬化症は、運動をつかさどる神経が障害を受け、脳から「手足を動かせ」という命令が伝わらなくなる病気です。

手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていき、呼吸機能や嚥下機能の低下、構音障害が生じます。

一方で、身体の感覚や視力・聴力、内臓機能は保たれることが多いのが特徴です。
現在のところ、病気が治ったり軽くなったりすることはありません。

進行を遅らせる薬物療法や、呼吸困難や嚥下困難への対症療法、日常生活動作(食事、着替え、トイレなど)を維持するためのリハビリテーションなどが行われます。

では、訪問診療ではALS患者さんにどのような診察を行うのか、詳しくみていきましょう。

  1. 体調管理

1.体調管理

訪問診療では、体温や血圧などのバイタルサイン測定のほか、体調の変化はないか、食事や睡眠状況はどうかなど医師の診察を行います。

ALSは、病状が落ち着いている時期もあれば、急速に症状が進行することもあります。
訪問診療の定期的な診察により、体調が落ち着いているときの様子も把握でき、急な変化にも早めに対応することが可能です。

体調を崩した場合、病院を受診するのは移動に負担もかかり大変なものです。
訪問診療を利用しておけば、体調を崩した場合も自宅で診察を受けることができます。その後の対応についても医師から説明があるので安心です。

2.医療機器の管理

訪問診療では、以下のような、使用している医療機器の管理も行います。

  • 人工呼吸器の管理
    問題なく作動しているかとともに、患者さんの呼吸状態に適した設定になっているかどうかを確認します。
  • 胃ろうの管理
    胃ろう部分の皮膚の状態の観察や栄養の注入は問題なくできているかを確認します。

使用している胃ろうの種類によっては、自宅で胃ろう交換をすることも可能です。

医療機器のことで心配なことがあるときは、訪問診療クリニックに相談しましょう。

3.必要なケアやサービスの調整:多職種連携

訪問診療による診察の結果、ケアやサービスの調整が必要となったときには、医師、看護師、リハビリ専門家など、さまざまな専門家と連携し、対応します。

ALS患者さんの場合、薬の調整や検査で通院を併用している人もいるでしょう。
訪問診療は、患者さんの自宅での様子や病気の進行状況を病院と情報共有し、連携を図ります。
病気の症状が落ち着いて過ごせる時間が少しでも長くなるように、在宅医療チームだけでなく病院との連携も欠かせないものです。

在宅医療におけるALS患者さんの治療の方向性

ALSは進行性の病気であり、人工呼吸器を使用しない場合は病気になってから死亡までの期間が約2~5年と言われています。

現時点では完治する治療法がないため、患者さんやご家族の希望や思いを尊重し、症状に合わせた対応や苦痛が少なく過ごせるようにサポートすることを大切にします。

病状の進行に合わせた対応

1.呼吸機能低下時

病状が進み、呼吸が十分にできなくなった場合、人工呼吸器の使用が検討されます。

患者さんの希望や呼吸機能の状態に合わせて、気管切開をして人工呼吸器を使用することもあります。
※気管切開とは、気管を切開し、穴にチューブを留置することで肺に空気を送りやすくするものです。

気管切開が必要な時期には、定期的に痰の吸引が必要なケースが多いため、吸引気の導入も検討されるでしょう。

2.嚥下機能が低下時

口から食事や水分が摂れなくなった場合には、胃ろうや経鼻胃管の選択肢があります。

経鼻胃管は短期的な使用が勧められるため、長期的な使用の場合は胃ろうを検討することが大半でしょう。
訪問診療では病状の進行に合わせて、患者さんやご家族に選択肢を情報提供します。

ここで大切なのは、医療者からの一方的な説明だけでなく、患者さんやご家族の思いや希望をしっかりと伝えることです。

患者さんやご家族の希望に沿った方針決定

人工呼吸器や胃ろうは呼吸や栄養を十分にとることが目的ですが、医療機器の導入や身体への侵襲があり、患者さんの心身への負担もかかります。

そのため、どのような治療やケアを望んでいるかを伝えることがとても大切です。
厚生労働省は「人生会議」という取り組みの普及を目指しています。
「人生会議」は「もしものときのために、今後のことについて考えておく」取り組みですが、ALS患者さんやご家族にもとても重要な考え方です。

「息が苦しくなってきたら」「ご飯や水が口から摂れなくなったら」どのような選択をしたいのか、ご家族やサポートする多職種も含めて話し合っておくことが大切です。
「痛くても長生きできるなら治療してほしい」「痛いのは嫌だからそのまま自然な形で」など、いろんな思いがあるでしょう。

患者さんを中心に、ご家族、医療者が同じ認識で同じ方向を向いてサポートすることが重要です。

まとめ

ALS患者さんの訪問診療では、病気の進行状況や患者さんの状態に応じ、適切な医療を受けることができます。

訪問診療を利用すると、急な体調不良でもすぐに相談できるため、安心して過ごせるでしょう。
患者さんとご家族の病気や今後の生活への想いを大切にしながら、後悔の少ない選択ができるように多職種と連携してサポートします。

この記事が、訪問診療の利用を考えているALS患者さんやご家族の参考になれば幸いです。

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