がんによる痛みは、身体だけでなく心や生活にも大きな影響を与えます。しかし、適切な痛みのコントロールと周囲のサポートがあれば、在宅でも快適な生活を送ることができます。
本記事では、がん性疼痛の仕組みや緩和方法、医療スタッフや家族との連携ポイントを解説します。

がんに関する在宅療養や訪問看護については、こちらの記事も参考にしてください。

がんによる痛みの理解と在宅での対応方法

がんの痛みは種類によって特徴が異なり、それぞれに適した対応方法があります。まずは痛みの性質を理解し、適切な治療法を選択していきましょう。

痛みの種類と特徴

がんの痛みには主に以下の3つのタイプがあります。

痛みの種類痛みの特徴・原因
侵害受容性疼痛体性痛骨や皮膚の転移による痛み(例:鋭い痛みやうずく痛み)
内臓痛がんの広がりによる内臓の痛み(例:鈍い痛みや引きつる痛み)
神経障害性疼痛神経圧迫やがんの広がりによる痛み(例:灼けるような痛み、電気が走る痛み)

これらの痛みは複数が同時に混在することも多く痛みの正確な評価と適切な治療が必要になります。

在宅でがんの痛みを和らげる方法

がんによる痛みの治療には、薬物療法と非薬物療法の両方を組み合わせることが重要です。それぞれの方法について説明します。

薬物療法

WHO方式がん疼痛治療法に基づき、痛みの強さに応じて段階的に薬を使用します。

  1. 軽い痛み:
    • アセトアミノフェンなどの一般的な鎮痛薬
  2. 中程度の痛み:
    • 弱い医療用麻薬
  3. 強い痛み:
    • 強い医療用麻薬

より効果的な痛みの緩和のため、これらの薬を組み合わせて使用することもあります。

非薬物療法

薬物療法と併用して、以下のような方法も痛みを和らげるのに役立ちます。

  • 体勢の工夫
  • 軽い運動
  • リラクセーション(深呼吸、瞑想)
  • 趣味活動などの気分転換 など

これらの方法は、痛みの種類や強さ、患者さんの状態に応じて選択します。医療スタッフと相談しながら、最適な組み合わせを見つけていきましょう。

在宅で医療用麻薬を安全に使うコツと注意点

医療用麻薬は、がんの痛みを効果的に和らげる重要な治療法です。正しい使い方を理解し、適切に管理することで、安全に使用することができます。

正しい使い方のコツ

医療用麻薬を正しく使うコツは、3つあります。

定期的に内服する

  1. 痛みを予防するため、決められた時間に薬を服用する
  2. 痛みが出てから飲むのではなく、あらかじめ痛みを抑える目的で服用するのが重要

レスキュー薬(頓服薬)を活用する

  1. 定期薬とは別に、急な痛みが出た際に飲む「レスキュー薬」が処方されることがある
  2. 痛み始めや体を動かす前などに適切に使用すると、痛みをコントロールできる

医療スタッフと連携する

  1. 痛みの状態や薬の効果、副作用を定期的に医療スタッフに伝える
  2. 必要に応じて、薬の種類や量を調整してもらう

在宅での注意点

正しい使い方のコツがある一方で、注意点もあります。

  • 副作用(吐き気・便秘・眠気)への対策を行う
  • 急な服用中止は避ける
  • 他の薬との相互作用に注意
  • 誤飲防止のため安全な場所に保管

医療用麻薬は、正しく使用すればがんの痛みを緩和できる効果的な薬です。薬に関して不安な要素があれば、遠慮なく医療スタッフに相談しましょう。

がんの痛みを医療スタッフや家族で連携する方法

がんの痛みは主観的な症状であり、周囲の理解と支援が欠かせません。医療スタッフと家族が密に連携することで、より効果的な痛みのコントロールが可能になります。

痛みの状態を以下の4つの観点から具体的に説明することで、より適切な治療につながります。

1.痛みの場所部位を具体的に指し示す痛みが広がっているか、移動しているか
2.痛みの強さ0(痛みなし)から10(想像できる最悪の痛み)の数字で表現痛みが最も強いとき、弱いとき、平均時の数値を伝える
3.痛みの性質「ズキズキ」「ヒリヒリ」「キリキリ」などの感覚を表現
4.痛みの経過いつから始まったか続く時間や頻度、日内変動

これらの情報は日々記録に残し、医療スタッフとの面談時に活用しましょう。

在宅でがんの痛みに寄り添う家族のケアと関わり方

家族の存在は患者さんの大きな支えとなります。以下のような総合的なサポートを心がけましょう。

日常生活のサポート

患者さんの生活の質を維持するため、以下のようなサポートを行います。

基本的なケア

  • 服薬管理の支援
  • 食事や水分摂取の援助
  • 清潔保持のサポート
  • 生活リズムの維持

環境づくり

  • 室温・照明の調整
  • クッションや枕を使用した姿勢の工夫
  • 介護用ベッドなど必要な福祉用具の活用

精神面のケア

  • 傾聴と共感
  • 趣味活動の支援
  • 思い出を語り合ったり、感謝の言葉を伝えたりする

医療スタッフとの連携

適切な医療ケアを継続するため、以下の役割を担います。

  • 症状変化の報告
  • 治療情報の共有と記録
  • 困ったときの早めの相談

ご家族だけで抱え込まず、周囲の力を借りながら、協力して痛みに向き合っていくことが大切です。

在宅でがんの痛みを支える医療サービス

在宅療養では、医療スタッフなどによる支援が不可欠です。訪問看護や訪問診療サービスを活用し、自宅でも医療ケアを受けられる環境を整えましょう。

24時間対応の相談体制や、緊急時の対応を受けられ安心です。

在宅で医療サービスを受けるための相談先として、かかりつけ医・訪問看護ステーション・地域包括支援センターがあげられます。まずは相談してみましょう。

ご自身にあった訪問看護ステーション・訪問診療クリニックの検索は、こちらから。

まとめ

がんの痛みは、医学の進歩により在宅でもしっかりとコントロールできるようになっています。適切な薬物療法と非薬物療法の組み合わせ、そして医療スタッフと家族の連携により、自宅でも安心して過ごすことができます。

24時間対応の在宅医療サービスも整っており、痛みや症状の変化にも迅速に対応できます。不安や疑問があれば、遠慮なく医療スタッフに相談してください。

一歩一歩できることから始め、その人らしい快適な療養生活を実現するため、家族で協力し、医療スタッフと連携しながら前に進んでいきましょう。

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