
「神経難病を抱えている家族の、在宅での栄養管理について知りたい」
「在宅の栄養管理に必要なケアってどんなこと?」
神経難病を抱えながら自宅で生活する患者さんにとって、食べることは生きるうえで欠かせないものであると同時に、日々の楽しみでもあります。
この記事では、神経難病の患者さんが自宅で栄養管理をするために大切なポイントを解説します。
具体的な事例も交えて紹介していますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
目次
神経難病を抱える患者さんの自宅における栄養管理
代表的な神経難病には、次の疾患があります。
- アルツハイマー病
- パーキンソン病
- 筋委縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
これらの神経難病の症状や進行のスピードは患者さんによりさまざまで、嚥下機能の低下も個人差があります。
在宅医療では、患者さんの嚥下機能に合わせた栄養管理を大切にしています。
どのような方法があるのか、詳しくみていきましょう。
嚥下機能が低下したときに考える栄養管理の方法
患者さんの嚥下機能の状態に合わせて、以下の栄養管理を検討します。
【嚥下機能の状態】 | 【栄養管理の方法】 |
---|---|
食べにくい(飲み込みにくい) | ・食形態の検討(柔らか食・きざみ食・ミキサー食)・栄養剤の処方(ラコール・エンシュア)・ポジショニングの工夫 |
誤嚥のリスクが高い | 人工栄養(胃ろう・経鼻胃管・中心静脈栄養)を検討 |
人工栄養の詳細は以下の通りです。
- 胃ろう:お腹の皮膚から管を通して栄養を補給する
- 経鼻胃管:鼻から食道を通して胃に管を入れて栄養を補給する
- 中心静脈栄養:心臓近くの太い血管にカテーテルを通し、持続的に点滴する
人工栄養と経口摂取は併用可能
神経難病のなかには、体重の減少が病気の進行に影響する疾患もあります。
そのため嚥下機能が低下した患者さんの体重を維持する目的においても、栄養管理は重要なものです。
「人工栄養になったら、もう口から食べられない」と思っている方もいるかもしれませんが、人工栄養と経口摂取は並行して行うことが可能です。
病気により身体機能が低下すると胃ろうや中心静脈栄養を検討することが難しくなるため、早めに人工栄養の準備をしておくこともあります。
もちろん、必ず人工栄養を行う必要があるというわけではありません。
病気の進行と患者さんの希望を配慮しながら栄養管理をすすめていきます。
事例でみる栄養管理
在宅では患者さんの希望や状態によって、個別性を考えた栄養管理を行っています。
ここでは、事例を通して栄養管理の実際をみていきましょう。
【患者さんの情報】
・80代女性、パーキンソン病のAさん
・家族と2人暮らし
・嚥下機能の低下あり
・胃ろうあり
・食べることが好き
【自宅での栄養管理】
・調子の良いときは娘様の介助で経口摂取
・胃ろうは調子が悪いときに水分や栄養剤を注入するために使用
・毎日栄養バランスを考慮した調理は難しい
Aさんのように「調子のいいときは経口摂取」「経口摂取が難しいときには水分のみ胃ろうから」という使い分けをしている方も多くいます。
栄養バランスのとれた食事は重要ですが、高齢者の場合は「食べたいものを食べたいときに」食べてもらうことを大切にしています。
在宅における栄養管理のポイントとケア
自宅での栄養管理は欠かせないものですが、患者さんやご家族のみで行うことは負担の大きいものでしょう。
ここからは、在宅医療で取り組んでいる栄養管理のポイントをお伝えします。
多職種連携によるサポート
在宅医療では多職種連携が不可欠ですが、栄養管理においても多職種で患者さんをサポートしています。
神経難病患者さんの栄養管理に関わる職種は次の通りです。
在宅医療サービス | 関わる職種 | サポート内容 |
---|---|---|
訪問診療 | ・医師・看護師・管理栄養士 | ・嚥下状態に合わせた食形態の検討・患者さんに適切な栄養バランスの提案 |
訪問看護 | ・看護師・理学療法士・言語聴覚士 | ・嚥下訓練・食事のときのポジショニング・食事の介助と嚥下状態の観察・嚥下状態に合わせた食形態の検討 |
訪問歯科 | ・歯科医師・歯科衛生士 | ・嚥下機能の検査(嚥下内視鏡)・義歯の調整・摂食嚥下リハビリテーションの指導 |
多職種がそれぞれの専門性を活かして、患者さんの状態に合った栄養管理の方法を検討・提案します。
個別性を考慮した食事内容
在宅における栄養管理では、患者さん一人ひとりに適した食事内容を考えています。
具体的には、次のような流れです。
- 患者さんの体格や活動量から1日の必要カロリーと水分量を計算する
- 患者さんの1日のおおまかな食事メニューを聞き取り、摂取カロリーを計算する
- 必要カロリーと摂取カロリーから、過不足を確認する
- 結果を踏まえて患者さんに食事内容の提案や栄養補助食品を紹介する
食事内容で困ったときには医師や看護師、管理栄養士に相談してみてください。
感染予防のための清潔ケア
日常的な清潔ケアと同じく、栄養管理においても「感染予防」のためのケアが大切です。
具体的には、以下のようなケアを行っています。
口腔ケア
経口摂取が難しい場合でも口腔ケアは必要です。スポンジブラシやガーゼで汚れを落とし、保湿ジェルで口腔内の乾燥を防ぎましょう。
胃ろうのケア
挿入部が汚れたときにはタオルやガーゼで拭いて清潔を心がけます。発赤や傷ができたら医師や看護師に相談しましょう。
中心静脈栄養のケア
カテーテル周囲の消毒は医師や看護師が行います。身体の清潔を心がけましょう。発赤や腫れ、痛みなどがあれば早めに医師や看護師に教えてください。
神経難病を抱える患者さんの在宅での栄養管理で大切にしたいこと
神経難病を抱える患者さんは、嚥下機能が低下していくなかで「食べたいのに食べられない」という悲しみを抱える方もいます。食べることは「身体機能の維持」と「生きるうえでの楽しみ」につながっています。栄養管理には患者さんの状態や希望に寄り添うサポートが重要だといえるでしょう。
患者さんの希望や価値観はさまざまで「胃ろうは怖い」「誤嚥しても口から食べたい」という方もいます。
患者さんやご家族の希望を尊重しつつ、安全性に配慮しながら、誤嚥のリスクを最小限に抑える経口摂取の方法を提案することもあります。
スポンジブラシにジュースを含ませて、お楽しみ程度に味を感じてもらうのも一つの方法です。
在宅医療では、どのような形であっても患者さんの「食べたい」という想いを叶えられるように努めています。
まとめ
神経難病を抱えた患者さんの栄養管理は、自宅で穏やかに過ごすためにも欠かせないものです。患者さんの状態や希望に合った栄養管理を、多職種で連携しながらサポートします。
患者さんやご家族の食事に対する想いを大切にしていますので、食事に関する不安や疑問があれば、ぜひ在宅医療スタッフに教えてください。
この記事が、栄養管理について知りたい神経難病を抱えた患者さんやご家族の参考になれば幸いです。
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