
在宅で療養している胃がん患者さんの中には、「腹水が溜まって苦しい」「どう対処していいかわからない」と感じる方が多いのではないでしょうか。
腹水による苦痛が軽減されると、自分らしく過ごせる時間が増え、ご本人もご家族も安心して療養生活を送ることができるでしょう。
この記事では、胃がん患者さんが在宅で受けられる腹水ケアや基礎知識、そしてご家族へのサポート方法について解説します。
目次
胃がんの腹水に対する在宅医療ケアの基礎知識
胃がんの進行に伴い、多くの患者さんは腹水が溜まりやすくなります。以下では、その具体的な症状と治療についてお伝えします。
腹水の症状と苦痛
腹水とは、血管やリンパ管から液体成分が漏れ出して、腹腔内に溜まったものです。腹水により臓器が圧迫され、胸郭の動きが制限されるため、以下のような症状が起きやすくなります。
- 腹痛やお腹の張り
- 食欲低下
- 呼吸困難(腹水によって横隔膜が押し上げられることによる)
腹水が溜まると太ったようにお腹が膨らみ、強い不快感を伴います。
腹水穿刺
腹水穿刺とは、お腹に針を刺して腹水を体外に排出させる治療のことです。この処置は、腹水による苦痛や呼吸困難の緩和を目的として行われます。
在宅でも腹水穿刺を受けることが可能です。事前に在宅療養支援診療所のスタッフと面談を行い、この処置が受けられるか相談しましょう。出血や感染などのリスクがあるため、医師の診察やご本人の希望に基づいて治療方針が決定されます。
腹水穿刺は通常30-90分程度で終わり、1回につき5リットル程度の腹水を抜くことが多いです。
手順は以下の通りです。
- ポータブルエコーを用いて、腹水の状態を確認する
- 腹部の穿刺部位に麻酔をかけて、針を腹腔内に挿入し、腹水を抜く
- 処置後は、出血の有無や血圧の変化を確認する
在宅で腹水穿刺を受けた場合、体調に応じて針を残したままにすることがあります。処置後の対応について、看護師に確認しておきましょう。
また、大量に腹水を抜いた際に血圧が下がることがあります。血圧を測定し、頭痛やめまいなどの症状に注意しましょう。腹水穿刺により、食事がとりやすくなったり、夜間の睡眠が改善したりする方が多いようです。
利尿剤による治療
腹水の治療には、利尿剤を内服して尿をたくさん出す方法もあります。腹水を尿として体外に排出することで、腹水の増加を抑えることができます。
利尿剤の使用量は、ご本人の採血データや病状、血圧などをもとに主治医が判断します。自己判断で内服量を調整しないようにしましょう。
利尿剤による治療には、以下のような注意点があります。
- 血圧が下がることがある
- 排尿が頻回となり、トイレ動作にともなう疲労が生じやすい
- 排尿が間に合わずに、下着を濡らしたり負担に感じたりすることがある
これらに配慮しながら、利尿剤による治療を進めていきましょう。
胃がんの腹水による苦痛を和らげるために家族ができる在宅ケア
胃がんの進行により腹水が溜まると、ご本人の苦痛が強くなることがあります。ご家族が近くでサポートすることで、ご本人は快適に過ごせるでしょう。ここでは、在宅でできる具体的なケア方法についてご紹介します。
食事の工夫
ご本人の体調に合わせて、柔軟に食生活をサポートしましょう。
腹水の増加を予防するため、次のような工夫を取り入れます。
- 塩分の制限(目安を主治医に確認します)
- たんぱく質の摂取
- よくかみながら、ゆっくり食べる
- 腹八分目で、美味しく食べる
- 消化しやすい食品を選ぶ
特に、腸閉塞の既往がある方、腹水が大量に溜まって腸閉塞のリスクが高い方は、さらに以下の点に注意しましょう。
- 食物繊維の多い食材を控える(根菜類や芋類、きのこ類など)
- 繊維の多い食材は、細かくカットする
- 消化の悪い食品を避ける(こんにゃくやわかめ、のりなど)
以上のような工夫を取り入れることで腹水の増加を防ぎ、少しでも楽に過ごすことができるでしょう。
姿勢の工夫
胃がん患者さんが楽な姿勢で過ごせるよう、以下のような工夫を取り入れます。
- クッションなどを用いて、ご本人の姿勢をサポートする
- 食事中やトイレ時など、動作に無理がないか確認する
- 長い時間、同じ姿勢を続けないようにする
- 呼吸困難があるときは、上半身を起こす
- 早目に介護用ベッドを用意し、ファーラー位(上半身を30〜45度起こした体位)を保持する(ずり落ちによる褥瘡や苦痛を予防できる)
腹水が多いときは、すぐ横になれる場所や時間を確保しておくことも大切です。体のだるさを感じたときは、無理せず楽な姿勢で過ごしましょう。
心理的なサポート
腹水が溜まると、多くの方が「もう末期ではないか」「予後が悪いのではないか」と不安を感じます。こうした不安を軽減するために、ご家族にできる心理的なサポートがあります。
- 「今日はどんな感じ?」など、日常的な会話から様子を伺い、無理なく気持ちを共有する
- ご本人が安心できるように体をさすったり、手を握ったりする
- 訪問看護師の訪問時に、患者さんがリラックスして話せる時間をつくる
患者さんが話しやすい環境を整え、ご本人の不安を少しずつ共有し、寄り添うことがポイントです。
胃がん患者を在宅でケアする家族へのサポート
がん患者さんが在宅療養を送る中で、ご家族の果たす役割は大きいといえます。ここでは、ご家族が無理なくケアを続けるためのサポートについて説明します。
ご家族にできること
患者さんの一番そばにいるご家族だからこそ、できることがあります。ご本人の日々の様子を観察し、気になる点はメモして主治医に伝えるようにしましょう。医師が症状を把握する助けとなり、より適切な治療を受けることができます。
胃がんが進行した場合は、消化管が狭くなることによる吐き気や嘔吐、腹水や腹痛、だるさや倦怠感などの症状が現れることがあります。ご本人にしかわからない辛さも多くありますが、ご家族がそばにいるだけで、ご本人は心強く感じられるでしょう。
医療・介護の訪問サービスを増やす
ご本人の苦痛が強い場合は、緩和ケアを手厚くしましょう。緩和ケアはがんに伴う体の痛みだけではなく、心理的苦痛やストレスを和らげます。医療用麻薬を用いて疼痛が軽減できると、患者さんの楽に過ごせる時間が増えるでしょう。
腹水が多くて日常生活動作が難しい場合、訪問介護サービスの増加を検討します。ご家族の負担が軽減され、日々のケアにゆとりが生まれます。
無理しないで介護者自身の休息も大切に
胃がん患者さんの痛みや苦しみは、想像以上に大きいかもしれません。そのため、ご家族だけで抱え込まず、在宅医療を支えるスタッフに相談して下さい。ケアマネジャーや訪問看護師と連携し、チームで問題を解決しましょう。
在宅療養は長期にわたることがあるため、ご家族が負担やストレスを感じたときは思い切って休むことも大切です。休息を取ることで、新たな気持ちでケアに取り組めるでしょう。ご家族の元気な姿が、ご本人の安心にもつながります。
まとめ|腹水のある胃がん患者を在宅ケアで支えるために
腹水による苦痛や痛みが緩和できると、QOL(生活の質)の向上につながります。ご本人もご家族も住み慣れた自宅で安心して過ごせるでしょう。
胃がん患者さんの腹水による苦痛は、ケア次第で和らげることができます。困ったときは医療スタッフを頼ってください。在宅での適切な腹水ケアが、より快適な療養生活につながります。
在宅医療どっとコムに
クリニック情報を掲載しませんか?
在宅医療どっとコムは在宅医療に取り組む多くのクリニックから情報をご提供いただき、在宅医療の普及を支援することを目的として運営しています。
在宅医療を必要とする患者様やそのご家族と在宅医療を提供するクリニックを繋ぐ場として、ぜひご利用ください。
お気軽にお問い合わせください
掲載のご相談は無料となっておりますのでお気軽にご連絡ください。
お問合せから2営業日以内にご返答させていただきます。
オンラインMTGツールを使用したご相談も可能となっております。
Copyright 在宅医療どっとコム ©2025 All rights reserved.