多発性硬化症は30代前後をピークに発症し、症状や進行の速度が患者さんごとに異なるため、一人ひとりに合わせた支援が必要です。

「多発性硬化症を抱えながら生活しているけれど、将来が不安」
「訪問看護はどのようにサポートしてくれるの?」
「症状の波があって仕事を続けられるか心配」

このような思いを抱えている多発性硬化症患者さんとご家族もいるでしょう。

訪問看護は、多発性硬化症患者さんの病状や体調だけでなく、患者さんの希望やライフステージを配慮しながらサポートする心強い存在です。

この記事では、多発性硬化症患者さんへの訪問看護の内容をお伝えします。個別性を考えたサポートをどのように行っているのか具体的に紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

多発性硬化症患者さんへの訪問看護の役割

多発性硬化症患者さんへの訪問看護には次の役割があります。

  • 日常生活支援
  • リハビリテーション
  • 多職種との連携

これらの役割は、患者さんの生活の維持に欠かせません。

それぞれのサポート内容をみていきましょう。

日常生活支援

状態の観察や内服管理のサポートなど体調の管理はもちろんですが、日常生活を送るうえで大変なことの相談を受け、必要なケアや助言を行うことも訪問看護の役割です。

具体的な支援例として、以下のようなケアを行っています。

【生活の質を高めるケア】

多発性硬化症の症状は日によって変動するため、患者さん一人ひとりの生活リズムに合わせたケアが重要です。訪問看護では以下のようなサポートを提供しています。 

・症状の変動に応じた活動と休息の調整 

・仕事や学業と両立できる生活リズムの提案 

・体調管理の自己管理方法の指導

【清潔ケア】

患者さんの身体機能に応じたケアを行います。とくに排泄に関する清潔ケアは患者さんやご家族も悩みやすいものです。

訪問看護では、患者さんやご家族の希望を確認しつつ、陰部の清潔ケアやおむつ交換を行います。
排尿障害で尿道留置カテーテルを使用している患者さんに対しては、看護師が定期的にカテーテルを交換し、感染予防にも努めています。

【暑さ対策】

多発性硬化症に生じる症状のひとつにウートフ徴候(※)があります。これは体温の上昇に伴って出現したり悪化したりするもので、体温が下がると治まるといわれています。

そのため、患者さんやご家族に対して室温管理や夏場の暑さ対策などのアドバイスを行い、ウートフ徴候の予防に努めます。

※ウートフ徴候:一過性に現れる視力低下や筋力低下・感覚障害・認知機能障害のこと

リハビリテーション

多発性硬化症患者さんの社会生活の維持・向上のため、症状に応じたリハビリテーションを提供します。急性期と慢性期で異なるアプローチが求められます。

急性期と慢性期におけるリハビリテーションの内容をまとめました。

病気の進行状況リハビリテーションの内容ポイント
急性期・定期的な体位変換・良肢位(関節の適切な角度)の保持・排痰法・身体的にも精神的にも安静が望ましい・麻痺の程度により調整しながら行う
寛解期から慢性期(病気の症状が軽くなる時期)・関節可動域の保持・筋力維持訓練・日常生活の基本動作や移動動作の訓練・膀胱訓練・過労を避ける・症状に応じて補助を検討する・感情の変動が激しくなることもあり、精神的なサポートも重要

病気の進行状況や患者さんの症状によりリハビリテーションの内容を検討します。理学療法士や福祉用具の業者とも情報共有しながら進めていきます。

多職種との連携

多発性硬化症患者さんを支えるためには、多職種連携が欠かせません。
訪問看護は患者さんに近い存在として、多発性硬化症の再発や急性増悪を早期発見し、早めに治療にすすめるように医師につなげる役割があります。

医師だけでなく理学療法士やヘルパー、福祉用具の業者、ケアマネジャーなどの多職種と連携し、患者さんの生活が快適なものになるようサポートします。

また、医療費の助成に関する支援も訪問看護の役割のひとつです。多発性硬化症は難病指定されているため、医療ソーシャルワーカーや相談支援専門員などの専門職と患者さんをつなぎ、適切な支援が受けられるようお手伝いします。

多発性硬化症患者さんの生活を充実させるための訪問看護のサポート

多発性硬化症は若年層での発症が多いことから、仕事や学校、家庭など社会的な役割を複数持つ患者さんもいます。
病気を抱えながらの社会生活は心身ともに大きな負担となります。

患者さんが社会生活において自分らしく過ごせるように、訪問看護では次のようなサポートを大切にしています。

  • 精神面へのサポート
  • ライフステージの変化に合わせた情報提供
  • ご家族へのサポート

具体的な内容をみていきましょう。

精神面へのサポート

多発性硬化症は病気の進行や症状の出現が患者さんごとに異なるため、将来の予測が難しい病気です。
そのため患者さんのなかには「自分の今後がどうなるのか」という不安を抱える方もいるでしょう。

訪問看護師は患者さんの気持ちに寄り添い、不安や悩みを傾聴しつつ必要に応じて適切な情報提供やケアを行います。

少しでも不安を軽減できるお手伝いをしますので、心配なことや不安なことは訪問看護師に教えてください。

ライフステージの変化に合わせた情報提供

多発性硬化症患者さんには就職や結婚、妊娠・出産、親の介護などライフステージの変化が重なる方もいます。

ライフステージの変化に伴う課題に対し、患者さんは悩みを抱えることもあるでしょう。
訪問看護では、多職種と連携し必要なサポートの調整を行ったり、患者さんがどのように対応したら良いか具体的な情報を提供したりできます。

困ったことがあったら、遠慮なく相談してください。

ご家族へのサポート

多発性硬化症患者さんを支えるためには、ご家族のサポートが不可欠です。

患者さんの病気の特徴や症状のコントロールについて理解してもらうために、分かりやすいアドバイスやご家族の負担を軽減するための提案も行います。
たとえば、ご家族の負担が大きい場合には、希望に沿いながら医療・福祉サービスの導入やレスパイト入院の相談をすることもあります。

ご家族のなかには患者さんのサポートに不安を抱える方もいるかもしれません。そのようなときには訪問看護師が支えますので安心してください。

まとめ

訪問看護は、多発性硬化症患者さんとご家族が安心して生活できるよう、患者さん一人ひとりに合わせたサポートを提供します。

病気を抱えながらの生活に不安を感じることがあれば、いつでも訪問看護にご相談ください。
訪問看護師が患者さんとご家族の生活を支えるお手伝いをします。

この記事が、訪問看護の利用を考えている多発性硬化症患者さんやご家族の参考になれば幸いです。

多発性硬化症患者さんが自宅で過ごすときに利用できる医療サービスには「訪問診療」もあります。詳しい内容を解説している記事もぜひご覧ください。

≫関連記事:「多発性硬化症患者さんの不安を軽減|訪問診療の役割を解説」

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