パーキンソン病関連疾患を抱えながら自宅での生活を続けたい方にとって、訪問看護は欠かせないサービスです。とはいえ、どのようなケアをしてくれるのか疑問に思う方も少なくないはずです。
この記事では、訪問看護で行うパーキンソン病関連疾患のケアの詳細、医療保険が優先される条件、そして利用に必要な手続きについて解説します。ご家族に行うフォローに関しても触れていますので、介護に悩んでいる方もぜひ最後までご覧ください。
目次
訪問看護で受けられるパーキンソン病ケア
パーキンソン病関連疾患の方は徐々に症状が悪化していくだけでなく、1日の中でも体調が大きく変動します。そのため、専門的なケアが重要です。
そこで訪問看護では以下のようなケアを提供します。
訪問看護で受けられるパーキンソン病ケアを把握しておき、訪問してくれる担当者と相談しながら進められるようにしておきましょう。
体調確認・病状のモニタリング
- 基本的な健康状態チェック(血圧、脈拍、呼吸状態、体温など)
- 運動障害の程度観察(振戦、筋固縮、動作緩慢、姿勢反射障害など)
- 非運動症状の確認(便秘、うつ症状、睡眠障害など)
- 観察結果の主治医への報告と情報共有
早期の問題発見と迅速な対応により、患者さんの生活の質向上や合併症の予防が期待できます。
服薬状況の確認・管理
パーキンソン病関連疾患の治療で第一選択となるのが服薬治療です。看護師は定期的な訪問で、処方されている薬剤の種類、用量、服用タイミングを確認します。
特に、レボドパ製剤などの抗パーキンソン病薬は、効果の発現時間や持続時間が患者さんによって異なるため、個々の症状や生活リズムに合わせた服薬スケジュールの調整が必要です。
また、薬の飲み忘れや重複服用を防ぐため、服薬カレンダーや薬剤管理ボックスの活用を提案し、必要に応じて使用方法を指導します。副作用の有無や程度も注意深く観察し、問題がある場合は速やかに主治医に報告します。
さらに、薬の作用や重要性についてもお伝えし、服薬管理を自身で行えるように支援するのも重要な役割です。
リハビリテーション
パーキンソン病関連疾患の方に対しては、定期的な運動やリハビリテーションを実施することが望ましいとされています。体が思うように動かせず寝たきりになってしまったり、歩行状態の悪化による転倒等の危険性が高まるからです。
リハビリテーションの主な目的は次の3つです。
- 筋力や柔軟性の維持・向上
- バランス能力の改善
- 姿勢の改善
これらの目的を達成するため、患者さん個人の状態に合わせて以下のようなプログラムを実施します。
- ストレッチ
- 筋力トレーニング
- 歩行訓練
- バランス練習
- すくみ足(足が出しづらくなる症状)への対処法指導
また、理学療法的なアプローチだけでなく、言語聴覚士と連携した訓練も重要です。嚥下(えんげ)機能や発声・発語の改善を目指す訓練は、誤嚥(ごえん)性肺炎の予防にも繋がる重要なリハビリテーションの一つです。
このように、リハビリテーションは多職種が連携して行う総合的なケアです。定期的な評価と調整を重ねながら、長期的な機能維持・改善を目指します。パーキンソン病関連疾患の方の生活の質を維持・向上させる上で、リハビリテーションは欠かせない重要なケアといえるでしょう。
生活環境の調整
パーキンソン病関連疾患の方にとって、安全で快適な生活環境を整えることは重要なケアの一つです。訪問看護では、患者さんの自宅を実際に見て、日常生活の中での困難や危険を把握し、適切な環境調整を提案します。
まず重要なのは、転倒予防のための対策です。廊下や浴室に手すりを設置したり、段差をなるべく解消したり、滑りにくい床材に変更するなどの提案をします。必要であれば介護用ベッドの提案やイスの選定など、立ち上がりやすさを考慮して福祉用具の担当者と調整します。
また、夜間のトイレ移動時に転倒するケースは非常に多いです。安全確保のために足元灯の設置を提案し、明るさの調整をするなども転倒予防に効果的といえるでしょう。
パーキンソン病患者のご家族に対する支援
訪問看護では、患者さんに対してのケアだけでなく、ご家族のフォローも重要な役割となります。日常の介護でご家族が感じる負担をなるべく取り除き、少しでも生活がしやすいよう、以下のような支援をしていきます。
メンタルケア
パーキンソン病関連疾患の患者さんをケアするご家族は、身体的にも精神的にも大きな負担を抱えることが多いです。訪問看護では、患者さんのケアだけでなく、ご家族のメンタルケアも重要な役割として担っています。
まず、ご家族の不安や悩みに耳を傾け、共感的な態度で接するように心がけています。病気の進行や将来への不安、介護と仕事の両立などの悩みは誰しもが直面する悩みです。介護負担が過度にならないよう、適切な介護サービスの利用をケアマネジャーを通して提案します。
介助方法の伝達
訪問看護では、ご家族や介護者に以下のような状況で介助方法をお伝えします。
- 1. 安全な移乗方法(ベッドから車いすへの移動など)
- 2. 歩行介助の仕方(すくみ足への対処を含む)
- 3. 食事介助(嚥下障害に配慮した食具の選定や介助方法)
- 4. 排泄介助(トイレでの介助や排泄用具の使用方法)
- 5. 更衣介助(症状に合わせた効率的な着脱方法)
これらの内容はほんの一部にしか過ぎません。患者さんの状態変化に応じて適宜介助方法の見直し、その時の状態にあった介助方法を一緒に考えていきます。
医療保険が優先される条件
パーキンソン病関連疾患の訪問看護では、介護保険ではなく基本的に医療保険が適用されます。
医療保険が優先される主な条件は以下の通りです。
- 1.ホーエン・ヤールの重症度分類がステージⅢ以上(姿勢やバランスが保てない)かつ、生活機能障害度Ⅱ度またはⅢ度の場合(日常生活に介助を要する)
- 2.65歳以上かつ上記以外で、特別訪問看護指示書が交付された場合(月14日間限定)
※特別訪問看護指示書は、重点的なケアを要する状態の際に主治医が発行するもので、この書類を訪問看護ステーションに提出すれば、医療保険での訪問看護サービスを受けることができます。状況に応じて適切な保険を選択し、必要なケアを受けましょう。
まとめ|患者さん本人だけでなくご家族へのケアも
今回は、訪問看護で行うパーキンソン病関連疾患のケアの詳細や医療保険が優先される条件と手続きについて解説しました。
パーキンソン病関連疾患の患者さんが自宅生活を継続する上で、訪問看護はなくてはならないサービスの一つです。もし日常生活に介助が必要な場合は、訪問看護の利用を検討してみてください。
また、医療保険で重点的にケアを受けられる場合もあります。そのような状態ではご家族の介護負担も大きくなっていることが予想されるため、看護師やケアマネジャーと相談して適切なサービスを受けられるように考えていきましょう。
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