末期の悪性腫瘍患者さんの訪問診療をお考えですか?
住み慣れた自宅で医療と緩和ケアを受けられる訪問診療は、自宅療養の支えになります。

本記事では、訪問診療の具体的な内容や在宅緩和ケアのメリットとデメリット、専門医との連携について解説します。訪問診療の導入の参考としてお読みください。

末期の悪性腫瘍患者さんへの訪問診療:住み慣れた自宅での医療

末期がんの患者さんは、病状に応じて継続的な医療ケアを必要としますが、通院が難しいことも多いです。訪問診療は自宅でのケアを充実させ、患者さんとご家族が貴重な時間を穏やかに過ごせるように支援します。

訪問診療の対象と頻度

訪問診療の対象は、自力で病院や診療所に通院することが難しくなった患者さんです。

訪問頻度は患者さんの病状によってさまざまで、2週間に1回から週に数回程度と幅があります。症状の進行や状態に変化がある場合は、さらに頻繁に訪問診療が行われたり、患者さんやご家族の求めに応じて往診が行われたりします。

訪問診療で行われる医療処置の具体例

末期の悪性腫瘍患者さんに訪問診療で行われる医療処置には、以下のようなものがあります。

  • 薬剤の投与(痛みや吐き気などの症状緩和)
  • 点滴の管理
  • 酸素療法
  • 膀胱留置カテーテルの管理
  • 胃ろうの管理や栄養の補助 など

患者さんらしく過ごすうえで、痛みのコントロールは特に重要で、医師が患者さんの状態を見極めながら、適切な鎮痛剤や量を調整します。

末期の悪性腫瘍で訪問診療を利用するメリットとデメリット

末期の悪性腫瘍を抱える患者さんにとって、訪問診療は安心できる環境で医療を受けるための選択肢です。一方で、いくつかのデメリットもあります。ここでは、在宅での緩和ケアを含めた訪問診療のメリットとデメリットについて解説します。

病院と在宅医療の比較

病院における緩和ケアと在宅医療における緩和ケアのメリットとデメリットについて、以下の表で比較します。

病院在宅医療
メリット・医療設備やスタッフが充実している・緊急時の対応が迅速で安心感がある・リラックスした環境でケアを受けられる・ご家族との時間が確保できる・通院や入院による負担が少ない
デメリット・通院や入院による精神的、肉体的な負担が大きい・ご家族との時間が制限されることが多い・医療設備や医師の常時対応が限られる・ご家族の負担が増える・病状によっては不安が伴う・専門医との定期的な相談を望む場合、訪問診療だけでは対応が十分でない場合がある

看取りの場所を含めて、事前にどちらを選択するか話し合っておくことは大切ですが、さまざまな事情や状況の変化によって、療養する場所を変更する柔軟性も大切です。

在宅での医学的管理と治療方針

患者さんが穏やかな時間を過ごすには、症状の進行に合わせた個別のケアが求められます。病院での治療と同様に、在宅でも適切な管理を行うことが可能です。

痛みや症状の具体的な緩和治療

末期の悪性腫瘍患者さんにとって、痛みや症状の緩和は重要な課題です。

訪問診療では、モルヒネや他の鎮痛薬を用いた痛みのコントロールや、吐き気や呼吸困難などに対する緩和ケアが実施されます。

訪問診療はチームで症状の変化に迅速に対応し、患者さんの苦痛を最小限に抑えるための治療を提供します。

専門医との連携体制

末期の悪性腫瘍患者さんの場合、進行する病状に応じて専門医の助言や入院調整が必要になる場面があります。訪問医と病院の専門医との連携によって、患者さんは自宅にいながら、専門的な医療を受け続けることができ、看取りの場面でもスムーズに入院できたりと安心感が増します。

訪問診療の費用と負担軽減策

訪問診療の導入を検討中の患者さんやご家族のなかには、費用の負担が心配という声も多く聞かれます。ここでは、訪問診療にかかる費用と軽減するための公的な制度について説明します。

在宅がん医療総合診療料とは

在宅がん医療総合診療料とは、末期の悪性腫瘍の患者さんが訪問診療と訪問看護を週4回以上利用した場合の費用を、1週間単位で包括的に算定する診療報酬制度です。

緊急の往診や訪問看護、処置などの料金がまとめられているので、訪問回数や処置が増えてたとしても、医療費をあまり心配せずにきめ細かな医療を受けることができます。

医療費負担軽減のための公的保険制度

末期がん患者さんが受ける訪問診療の費用には医療保険が適用されるので、自己負担は1〜3割に抑えられます。さらに、高額療養費制度を利用すれば、月ごとの医療費負担は一定の限度額までです。

また、要介護認定を受けている場合、介護サービスは限度額の範囲内であれば1〜3割の自己負担になるため、経済的負担を減らせます。

診療所選びのポイント

以下のようなポイントを押さえたうえで、診療所を選ぶと安心です。

  1. 1.専門的な緩和ケアが提供されているか
    • 緩和ケアの経験が豊富な医師や看護師の在籍
    • 在宅緩和ケア充実診療所の認定
  2. 2.24時間体制で対応できるか
  3. 3.病院との連携体制が整っているか

※緊急の往診実績や在宅での看取りの実績などの基準がある

まとめ | 患者さんやご家族の穏やかな時間を、訪問診療が支えます

訪問診療によって、自宅で過ごす時間や空間を大切にしながら、必要な医療を受けられます。訪問診療は、患者さんとご家族が自宅でより充実した時間を過ごすための大きな支えとなるのです。

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