進行性筋ジストロフィー症は難病のひとつで、根本的な治療が難しい病気です。
研究により治療薬の開発が進められていますが、現時点では症状への対症療法や合併症の予防が基本の方針とされています。
病気を診断され、今後の生活に不安を抱える患者さんやご家族も多いでしょう。
「進行性筋ジストロフィー症の訪問診療の内容について知りたい」
「訪問診療を利用するとどんな生活ができるの?」
このような悩みを抱える方に、この記事では進行性筋ジストロフィー症患者さんへの訪問診療の具体的なサポート内容をご紹介します。
自宅で生活されている患者さんの事例も紹介していますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
目次
進行性筋ジストロフィー症患者さんへの訪問診療の内容
進行性筋ジストロフィー症は、筋肉の筋線維が壊死や再生を起こし、進行性に筋力が低下する遺伝性の疾患です。
症状の現れ方や進行の早さは個人差があるため、患者さん一人ひとりの状態に合わせた対応が必要です。
訪問診療では、次の3つの主なサポートを行います。
体調管理
定期的に患者さんの診察にうかがいます。
診察時には体調の確認とともに、日々の体調の変化や困りごとについて、患者さんやご家族から丁寧にヒアリングを行います。
定期的に患者さんの経過を把握しておくことは、病気による症状の進行を早期発見するために欠かせません。些細な事でも、気になる症状があるときは相談してください。
症状に応じた対応
進行性筋ジストロフィーは、筋肉の障害により次のような症状を引き起こします。
- 運動機能障害
- 心機能の低下
- 呼吸機能の低下
- 嚥下機能の低下
訪問診療では、患者さんの症状の程度や病状の進行速度を慎重に観察し、それぞれの状況に応じた適切な対応を検討します。
例えば「リハビリテーションの導入」や「薬剤の検討」「人工呼吸器や胃ろうなどの医療機器の導入」です。
患者さんやご家族の意思も確認しながら、現れた症状による負担を最小限にできるよう努めています。
病院との連携
「病院への通院も継続したい」と思われる方もいるでしょう。もちろん、病院への通院と訪問診療を併用することは可能です。
進行性筋ジストロフィー症には、病状の経過を知るための定期的な検査が欠かせません。訪問診療では対応できる検査が限られているため、定期的に通院し検査を受け、病気の経過を把握しておくことが大切です。
訪問診療は、自宅での患者さんの経過を病院の主治医と共有したり、検査結果から自宅での対応を相談したりしています。
訪問診療と病院の通院を併用することで、より包括的な医療ケアが可能になるのです。
進行性筋ジストロフィー症と付き合いながら生活するために訪問診療ができること
進行性筋ジストロフィーを抱える患者さんのなかには、自宅での生活が想像できず、不安を抱える方もいるでしょう。
患者さんの生活をサポートするために、訪問診療ができることを具体的にお伝えします。
日常生活の困りごとへの対応
進行性筋ジストロフィー症を抱えながら生活するためには、患者さんやご家族の日常生活の負担を減らすことが大切です。
訪問診療は「身体が動かしにくくなってきた」「食事が進まなくなってきた」など症状の相談を受け、必要に応じて理学療法士や管理栄養士などの多職種と連携しながらサポートします。
また「眠れない」「皮膚が荒れた」など、日常生活の中での困りごとにも対応できます。他の診療科を受診しなくても、訪問診療で対応できるケースがあることもメリットのひとつです。
体調を崩したときの対応
進行性筋ジストロフィー症により車椅子や人工呼吸器を使用していると、体調不良で病院を受診するにも心身に負担がかかるものです。
訪問診療では、24時間365日、体調不良や症状の相談などの対応ができる体制を整えています。
体調を崩したときにも、希望に応じて診察にうかがい、血液検査や抗生剤の注射をすることができます。また、症状によっては病院への紹介も可能です。
できるだけ患者さんへの負担が少ない方法を提案できるよう心がけています。
意思決定のサポート
訪問診療は「症状が進んだときにどうしたいか」「今後どのように過ごしたいか」など患者さんやご家族の想いに耳を傾けることを大切にしています。
例えば「気管切開はしたくない」「食べられなくなったときには胃ろうを考える」などの考えは人それぞれちがいます。
患者さんの想いを尊重することはもちろん大切ですが、治療やケアの選択肢を知らないままに今後の方針を決めることが正しいとは限りません。
訪問診療では、症状に対してどんな対応ができるのか、医療側の視点からメリットやデメリットをお伝えしています。
患者さんやご家族がさまざまな選択肢から意思決定できるようサポートしますので、一緒に考えていきましょう。
進行性筋ジストロフィー症患者の在宅生活と多職種連携の重要性
進行性筋ジストロフィー症患者さんの在宅生活を支えるには、さまざまな専門家による連携が不可欠です。ここでは、訪問診療をはじめとした医療サービスと介護サービスを利用して在宅生活を送る患者さんの事例をご紹介します。
【事例:進行性筋ジストロフィー症の20代男性Aさん】
- ひとり暮らし
- 下肢に装具の装着あり
- 自宅をバリアフリーに改装し車いすで生活
- 仕事はパソコンを使用した在宅ワーク
- 月2回訪問診療、週1回訪問看護、毎日訪問介護を利用
【連携エピソード:呼吸機能の低下に対する多職種連携での対応】
Aさんは最近、仕事中に息切れを感じることが増え、夜間の睡眠の質も低下していました。この状況に対し、訪問診療、訪問看護、ヘルパーが連携して以下のように対応しました。
- 1.訪問診療(医師)
- 呼吸機能検査を実施し、軽度の呼吸機能低下を確認
- 呼吸リハビリテーションの指示
- 必要に応じて在宅酸素療法の検討
- 2.訪問看護(看護師)
- 呼吸リハビリテーションの指導
- 効果的な呼吸法や姿勢の改善方法の指導
- 睡眠時の体位調整方法を提案
- 3.訪問介護(ヘルパー)
- 日中の作業姿勢の確認と調整を行い、呼吸がしやすい環境を整備
- 訪問看護師の指導に基づき、日常生活の中での呼吸法実践をサポート
- 室内の換気や湿度管理
【連携の成果】
連携により、Aさんの症状に次のような改善がみられました。
- 仕事中の息切れが減少し、作業効率が向上
- 夜間の睡眠の質が改善され、日中の体調も安定
- 呼吸への不安が軽減され、精神的にも落ち着いて生活できるようになった
多職種が密に連携することで、患者さんの生活の質を総合的に向上させられることがわかります。各専門家が自身の役割を果たしつつ、情報を共有し協力することで、在宅療養における課題に効果的に対応できるのです。
さらに、訪問診療は医療・介護サービスの連携だけでなく、仕事や学校など患者さんが日常生活で関わる人とのつながりも大切にしています。
包括的なアプローチにより、進行性筋ジストロフィー症患者さんの生活の質を最大限に高めることが可能となります。
まとめ
訪問診療は、進行性筋ジストロフィー症患者さんの生活を医療の面から支える心強い存在です。
病気の症状や進行に合わせて対応を考え、患者さんの負担が最小限となるように努めています。また、日常生活での困りごとから緊急時まで、幅広く対応することが可能です。
訪問診療の導入について詳しく知りたいときには、病院の主治医や近隣の訪問診療を行っている医療機関に相談してみてください。
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