末期がんになっても「自分らしく過ごしたい」「住み慣れた自宅で入浴を楽しみたい」と願う方は多いのではないでしょうか。
入浴は心身のリフレッシュに効果的ですが、一方で体調への影響やご家族の負担が心配になることもあります。

この記事では、末期がん患者さんとご家族が安心して自宅で入浴を実現するためのポイントを解説します。

末期がん患者が自宅で入浴する3つのメリット

入浴は、末期がん患者さんにとって良い効果をもたらします。主なメリットを3つご紹介します。

1.清潔ケアでスッキリした気分に

入浴は、汗や皮脂、分泌物などを洗い流して清潔を保ち、気持ちをリフレッシュさせます。皮膚の健康を維持し、褥瘡などの皮膚トラブルの予防にも役立ちます。

さらに、お湯に浸かることで血行を促進し、筋肉をほぐして痛みを和らげる効果が期待できるでしょう。入浴後はスッキリした気分が得られ、心身のストレス解消にもつながります。

2.緩和ケアができる

最近の臨床研究結果によると、「湯船につかる入浴」によって、末期がん患者さんの身体的・精神的苦痛が軽減することが確認されています。入浴により心身のリラックス効果が生じ、痛みや倦怠感が緩和される効果が期待できます。入浴は、生活の質(QOL)を高めるケアの一環といえるでしょう。

3.住み慣れた自宅での入浴が「生きがい」になる

「入浴が楽しみ」と感じる末期がん患者さんも多く、定期的な入浴が生活にハリを生み出すことがあります。たとえば週に一度の入浴を目標にすることで、生きがいを感じるきっかけになるかもしれません。

 末期がん患者が自宅で入浴するときの状態別の注意点とケア方法

入浴すると身体が温まり、体内の熱を逃がすために体力を消耗します。ご本人の呼吸数や心拍数が上昇することがありますので、注意が必要です。ここでは、末期がん患者さんが安全に入浴するためのポイントを解説します。

自分で動ける時期のケア

日常生活動作(ADL:食事・排せつ・入浴などの基本的な動作)が自立している場合、安全な環境づくりが大切です。特に浴室での転倒を予防するため、次のように対応を検討しましょう。

  • 脱衣所の段差を解消する
  • 浴室内外に手すりを設置する
  • 浴室内に滑り止めシートを敷く
  • 浴槽の出入りをサポートする椅子を用意する

自宅改修が難しい場合には、福祉用具のレンタルや購入を検討して下さい。ケアマネジャーに相談し、患者さんの入浴動作に適した環境を整えることをおすすめします。

入浴に不安がある場合は、まずかかりつけ医や病院の相談窓口に相談してみましょう。医療ソーシャルワーカー(MSW)に介護保険の申請方法や、訪問看護、入浴介助サービスなどについて相談できます。入浴動作の確認や介助方法について専門家のアドバイスを受けることで、より安全な入浴環境を整えることができます。

介助が必要になった時期のケア

症状が進行し、介護が必要になった場合は、次のような対応を考えましょう。

介護者を二人以上確保する:
二人で準備し、二人でケアを行うことで入浴時間を短縮し、ご本人の負担を軽減できます。また、万一体調不良が生じた場合も安心です。ご家族の負担が大きい場合は、訪問介護サービスの利用を検討しましょう。

訪問看護を活用する:
痛みや倦怠感が強い場合、または酸素吸入や医療機器を使用している場合は、訪問看護を利用します。看護師がバイタルサインを確認しながら入浴ケアを行うため、安全に入浴できます。また、褥瘡の観察や処置、カテーテルやストーマケアも依頼できるため、安心して生活を続けられます。

入浴方法を工夫する:
デイサービスでのリフト浴や訪問入浴サービスの導入を検討しましょう。ご家族だけで抱え込まず、複数の介護サービスを活用してご本人の希望に沿った入浴ケアを提供することが大切です。

寝たきりに近い時期のケア

自宅での入浴が困難となった場合には、訪問入浴サービスを利用しましょう。このサービスでは、看護師1名を含む3人以上のスタッフが自宅を訪問し、専用の簡易浴槽を使用して入浴をサポートします。事前に、主治医の入浴許可をもらっておくことが必要です。

訪問入浴サービスを導入するメリットは以下の通りです。

  • 入浴前後に看護師が健康チェックを行うため、末期がん患者さんも安心です。
  • ご家族の介護負担感が軽減できます。
  • 体調により全身浴が難しい場合でも、清拭や洗髪のサービスを受けられます。

訪問入浴サービスの費用は介護保険適用で1回あたり約1,266円(1割負担の場合)ですが、お住まいの地域や入浴回数、事業所やケア内容によって異なります。詳細については、事前に確認することをおすすめします。

末期がん患者の入浴介助をする家族の負担を軽減するために

末期がん患者さんのケアをするご家族は、予期せぬ病状の変化や日々の介護、薬や医療機器の管理などに多くの不安を抱えがちです。安心して入浴ケアを続けるためのヒントをご紹介します。

早めの介護保険申請をおすすめ

介護保険の申請をする場合、末期がん患者であることを伝えると通常より早めに要介護認定が下りる場合があります。末期がん患者さんは急速に病状が進行することがあるので、早目に介護認定を受けとり、サービスを活用して、安心して過ごせる療養環境を整えましょう。

 せん妄(意識が混乱する状態)症状があるときは無理しない

がん末期患者さんの場合、脳転移からせん妄症状が現れることがあります。ご本人が混乱しているときは、不安を軽減するための声かけをしましょう。ご本人のペースを尊重します。

また、不安感や羞恥心から、直前に入浴を拒否することがあります。予定の入浴ができなかったときも、ご家族が負担に感じる必要はありません。ご家族だけで悩みを抱え込まず、主治医や訪問看護師に相談しながら最適なケア方法を選びましょう。

入浴以外の潔ケア方法

入浴ができないときも、蒸しタオルによる清拭や洗髪、足湯などの方法で皮膚の清潔を保つことができます。ご本人の体調に配慮し、タイミングを見計らってケアを行うことが大切です。また、二人以上で清潔ケアを行えると、ご本人やご家族の負担感を軽減できます。

末期がんの方の訪問看護サービスについて、くわしくはこちらをご覧ください。
≫「【穏やかな最期のために】末期の悪性腫瘍を抱えても訪問看護で実現する自宅療養」

まとめ|安心して入浴を楽しむために

入浴は、末期がん患者さんの心身をケアする大切な時間です。体を清潔に保つだけでなく、心のリフレッシュにもつながり、QOL(生活の質)の向上に役立ちます。

在宅療養には不安がつきものですが、入浴介助について一人で抱え込む必要はありません。早めに医療・介護の専門家に相談し、サービスを利用することで、無理のない入浴ケアが実現できます。患者さんの「お風呂に入りたい」という願いに、できる限り寄り添っていきましょう。きっと、その時間は患者さんとご家族にとって、かけがえのない大切な思い出となるはずです。

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