「自宅に帰ってから、食事がほとんど摂れなくなった……」
「どんどん体重が減っていくのが心配……」
がんの進行で食事が難しくなると、患者さんもご家族も大きな不安を感じるものです。

末期がんの患者さんが在宅で食事をするには、ご家族のサポートが欠かせません。適切な工夫や支援があれば、食事の時間をより楽しむことができます。

今回は、末期がんの患者さんとご家族のために、在宅療養の食事を支える具体的なアドバイスをお伝えします。

末期がん患者の在宅における食事の課題

末期がんの進行に伴い、食事に関して身体的な問題だけでなく、心理的な面も含め様々な課題が生じます。これらの課題を理解し、適切に対応することで、より快適な在宅療養生活を送ることができます。

主な課題と対応策は以下のとおりです。

課題影響対応策
食欲不振・口腔炎症・嘔吐栄養不足、体力低下症状に応じた食事形態の調整少量頻回摂取
食事への不安・焦り心理的ストレス無理のない範囲で楽しめる食事を心がける家族間での気持ちの共有
家族の負担増加介護疲れ、心理的疲労調理の工夫医療サービスの活用
終末期の栄養管理方針決定の難しさ点滴や経管栄養を行うか、自然な経過をみまもるかを医療チームと相談状態に応じた柔軟な対応

これらの課題に対しては、医療チームのサポートを受けながら、段階的に対応していくことが重要です。

在宅療養中の末期がん患者向け:症状別の食事例

症状によって食事の摂り方は大きく変わります。ここでは、よくある症状別の対応方法をご紹介します。患者さんの状態に合わせて、できそうな工夫から取り入れてみましょう。

症状食事例
食欲不振食べられるものを食べたい時に少量ずつ摂取小さい器に盛る(食べた満足感を得られる)のどごしの良いもの(ゼリー・プリンなど)食欲を増進効果のある酸味やスパイスを使用
吐き気吐き気が治まっているタイミングでこまめに食べられるよう、1食の量を減らして準備する常温や冷たいもの・すっぱいものは比較的食べられることが多い
口腔内の炎症刺激を避け常温で薄めの味付けにする刻みやペースト状など、食事形態を一時的に変える

末期がんの在宅食事における家族の工夫とサポート

食事を支えるご家族の負担を少しでも軽減できるよう、簡単な在宅調理での工夫を紹介します。

調理の工夫

日々の調理を効率的に行うことで、介護の時間を確保できます。

  • 家族の食事と同じ料理を応用(味付けを調整)
  • 小型ブレンダーやとろみ剤の活用
  • 週末にまとめて調理し、冷凍保存
  • 電子レンジ調理の活用
  • 介護食の利用

栄養補助食品などの活用

食事だけでは栄養が不足する場合は、栄養補助食品を活用しましょう。

  • エネルギー補給ゼリー(手軽に必要カロリーを補給)
  • たんぱく質補給飲料(筋力維持に重要)
  • 高カロリーアイスクリーム(食欲不振時でも食べやすい)

病気や口腔内の状態によって、食べ物の好みが変わっている可能性があります。

末期がんでみられる食事摂取量と体重の減少は、終末期によく見られる正常な反応である場合もあります。医療スタッフに相談しながら、体調や状態に応じた無理のない食事を心がけることが大切です。

末期がんの食事を支援する医療サービス

在宅療養を支える以下の医療サービスを上手に活用することで、ご家族の負担を軽減できます。

サービス担当者主な栄養サポート内容
訪問診療医師– 全身状態管理
– 痛みのコントロール
– 栄養サポート処方(高カロリー輸液、食欲増進剤、制吐剤など)
– 栄養状態の評価と改善策の提案
– 胃瘻(いろう)や中心静脈栄養などの点滴の検討・相談
訪問看護看護師– 日常生活支援
– 医療処置
– 体調管理
– 食事摂取状況の確認
– 家族の相談対応
訪問栄養指導管理栄養士– 食事内容提案
– 調理方法指導
– 栄養補助食品選択
– 家族向け調理実習
– 栄養状態の評価
訪問薬剤指導薬剤師– 薬の管理方法
– 副作用対策
– 服薬指導
– 食事と薬の相互作用確認
– 栄養補助食品の相談

これらのサービスの導入は、かかりつけの主治医や病院の地域連携室、お近くの訪問看護ステーション、地域包括支援センターなどに気軽に相談してみてください。

在宅療養におけるサービスについては、以下の記事も参照してください。

「【知っておきたい】在宅医療サービスの種類別ガイド:それぞれの特徴を詳しく解説」

≫「訪問看護を利用して在宅で点滴を受けるには?

末期がんの患者さんと家族が楽しい食事時間を作るには

食事摂取量が少なくなると、ご家族は不安に感じるかもしれません。しかし、食事は栄養補給だけでなく、大切なコミュニケーションの時間です。食事時間をより良いものにすることも大切に、以下のことを心がけてみてください。

心がけたいこと具体的な取り組み
気持ちに寄り添う・無理強いしない
・食べられる量で十分と受け止める
・不安な気持ちを共有する
環境づくり・可能な限り一緒に食卓を囲む
・楽しい会話を心がける
・食事環境を整える
思い出作り・好みの味を取り入れる
・思い出の料理を共有
・季節の食材を楽しむ

まとめ

末期がんの在宅療養における食事は、ご本人と家族にとって大きな課題となりますが、適切な工夫と支援があれば、より良い形で向き合っていくことができます。

医療チームによるサポートを積極的に活用し、ご家族だけで抱え込まないことが重要です。食事の工夫と医療サポートを組み合わせることで、残された大切な時間をより快適に過ごすことができます。

不安なことがあれば、担当医や訪問看護師に相談してください。医療チームが連携して、患者さんとご家族の在宅療養生活をサポートします。一人で抱え込まず、周囲のサポートを積極的に活用しましょう。

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