人工呼吸器を使用している患者さんとご家族にとって、自宅での生活は不安が大きいものです。
「人工呼吸器を使用しながらの生活はどんなことに気を付ければいいの?」
「訪問看護は何をしてくれるの?」
このように思っている方もいるでしょう。
この記事では、人工呼吸器を使用している患者さんに訪問看護が提供するケアやサポートについてお伝えします。
人工呼吸器の日常的なケアやトラブル時の対応についても詳しく解説していますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
目次
人工呼吸器を使用している患者さんの訪問看護によるサポート内容
自宅で人工呼吸器を使用することがあるのは、次の病気や状態が挙げられます。
- 呼吸器疾患
- 慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎
- 神経・筋疾患
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィー
- 小児
- 脳性まひやてんかん
人工呼吸器は、患者さんの呼吸をサポートする重要な役割を担っています。
患者さんが人工呼吸器を使用しながら安心して生活するために、機器の適切な管理や患者さんへの日々のケアが欠かせません。
訪問看護が提供するサポートは次の4つが挙げられます。
- 体調確認
- 人工呼吸器の管理
- リハビリテーション
- 日常のケア
それぞれの内容を詳しくみていきましょう。
体調確認
訪問看護師は、人工呼吸器を使用している患者さんの呼吸状態を含めた全身の状態を確認します。
バイタルサイン(体温、血圧、脈拍、呼吸数)の測定や呼吸音の聴診、症状の変化や困りごとなどの情報を集め、患者さんの今の状態をアセスメントします。ときには呼吸状態や体調を崩すこともあるでしょう。その場合は主治医と連携し、患者さんの苦痛が最小限となるようにサポートします。
人工呼吸器の管理
人工呼吸器を使用している患者さんにとって、人工呼吸器の異常は命の危機につながります。患者さんが人工呼吸器を安全に使用できるように、訪問看護師は次の項目を点検します。
- 呼吸器のモードや設定の数値
- 患者さんの気道内圧の数値
- アラームの作動状況やアラームの意味
- 呼吸器本体の異常音や発熱、異臭の有無
- 加温加湿器の温度
人工呼吸器の管理には、患者さんやご家族からの情報も重要です。
「こんなことに困っている」「〇〇をしていたらアラームが鳴った」など、日常のできごとを訪問看護師に伝えておくと、トラブルの早期発見・対応につながります。
リハビリテーション
人工呼吸器を使用している患者さんは、ベッド上での生活や日常生活の動作が制限されることも少なくありません。
しかし、できる範囲で座る姿勢をとったり身体を動かしたりして、筋力の低下を防ぐことが大切です。
場合によってはリハビリスタッフと連携し、呼吸に使う筋力の維持や痰を出しやすくするための「呼吸リハビリテーション」を行うこともあります。患者さんの残っている力を維持できるように、患者さんの力や体調に合わせて看護師やリハビリスタッフがサポートします。
日常のケア
人工呼吸器を使用している患者さんの日常的なケアを行ったり、ご家族にケアの方法を指導したりすることも訪問看護の役割です。
- 痰の吸引
- 気管切開をしている患者さんは自分で痰を出すことが難しく、吸引が必要です。
- 日常的に痰を吸引する必要があるため、ご家族にも吸引の方法をお伝えします。
- 口腔ケア
- 唾液に含まれる細菌や虫歯、歯周病などの原因菌は肺炎を起こす原因のひとつです。
- 口腔内を清潔に保つことで、唾液を誤嚥した場合に起きる肺炎のリスクを最小限にできます。
- 清潔ケア
- 人工呼吸器を使用している患者さんには寝たきりの方もおり、褥瘡のリスクが高い状態にある傾向があります。
- 皮膚トラブルを防ぐために、清拭や入浴などの清潔ケアも重要です。
人工呼吸器を使用していても、訪問入浴というサービスを利用して自宅で入浴できます。組み立て式の浴槽を設置し、看護師やヘルパーが連携して患者さんの入浴をサポートします。
人工呼吸器を使用している患者さんとご家族のサポート
人工呼吸器を使用している患者さんやご家族にとって、人工呼吸器への不安がなく安心して過ごせることは生活の質に関わる大切なことです。
訪問看護は、患者さんやご家族が困ったときにすぐ相談できる体制を整えています。
具体的なサポート内容をみていきましょう。
トラブル時の対処
「人工呼吸器のアラームが鳴っている」
「人工呼吸器がなにかおかしい」
自宅で人工呼吸器のトラブルが起きたときの患者さんとご家族の不安は大きいものです。人工呼吸器のトラブルが起きたときには、訪問看護に連絡しましょう。
訪問看護師がアラームや異常の内容、患者さんの状態などを聞き、対処方法をお伝えしたり、必要な場合は訪問して確認したりします。
今後同じトラブルが起こらないように主治医とも情報共有し、人工呼吸器のトラブルを未然に防ぐ対策を検討することもあります。
人工呼吸器に異常が起きた場合の対応で覚えておきたいのが、アンビューバッグ(蘇生バッグ)による呼吸の介助方法です。緊急時の対応の手順について心配なことは、訪問看護師に確認しておきましょう。
精神面のケア
人工呼吸器を使用していることによる患者さんの負担は心身ともに大きく「思うような生活ができなくてつらい」と思う方もいるでしょう。患者さんをサポートするご家族の負担も大きいものです。
訪問看護は、患者さんやご家族の気持ちのサポートも大切にしています。
「今どんな思いでいるのか」「今後どのように過ごしていきたいか」という想いを傾聴し、ご希望に沿った生活が実現できるようにサポートします。
また、患者さんの精神面の安定にはご家族の健康も大切です。
ご家族の介護負担によっては、希望に沿いながらショートステイやレスパイト入院を考えることもあります。
多職種連携
厚生労働省による地域包括ケアシステムの導入により、在宅医療では多職種が連携して患者さんの生活をサポートする取り組みが重要視されています。
もちろん、人工呼吸器を使用している患者さんを支えるための多職種連携も不可欠です。
自宅で人工呼吸器を使用している患者さんのサポートでは、必要に応じてケアマネジャーや訪問診療、訪問介護やデイサービスなどが連携しています。
その中で訪問看護は、患者さんやご家族の希望に合わせて利用できるサービスを提案したり、これらの職種と情報共有してケアの導入や変更を検討したりします。
まとめ
訪問看護は、人工呼吸器を使用している患者さんとご家族が穏やかに生活できるようサポートする心強い存在です。
人工呼吸器に必要な日常的なケアからトラブルが起きたときの対応まで、生活するうえで大切な看護を提供するとともに、ご家族も不安なく対応できるように支援します。
訪問看護の利用について気になることは、ケアマネジャーや近隣の訪問看護ステーションに相談してみましょう。
この記事が、人工呼吸器を使用している患者さんやご家族の参考になれば幸いです。
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