「在宅酸素をすることになったけど、訪問看護は何をしてくれるの?」
「息苦しくなったりSpo2が下がった時が不安。いつでも気軽に相談したい…」
慢性呼吸不全などの患者さんが自宅など病院の外で、酸素を吸入しながら生活する治療法である在宅酸素療法。
いざ自宅で使用するとなると、機器の扱いや生活の中での息苦しさに不安になる方もいるでしょう。
在宅酸素療法を受けている方、受けることになった方やそのご家族にとって、訪問看護は大きな味方です。
酸素療法の管理や指導、呼吸状態の観察など、訪問看護師が提供するサービスは多岐にわたります。
この記事では、訪問看護師である筆者が、在宅酸素療法における訪問看護の役割やサービス内容、保険適用についてわかりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
在宅酸素における訪問看護の役割
在宅酸素療法とは?
在宅酸素療法とは、慢性呼吸不全などの患者さんが、自宅で酸素を吸いながら生活する治療法です。酸素濃縮器や携帯用酸素ボンベを使用し、日常生活の中で必要な酸素を補います。
在宅酸素療法により、住み慣れた地域で暮らし、外出や趣味を楽しむことが可能です。
現在15万人以上の方が在宅酸素療法を実施しながら自宅で生活されています。
Home Oxygen Therapyの頭文字をとって「HOT(ホット)」と呼ばれています。
在宅酸素療法における訪問看護の役割
訪問看護師が自宅などにうかがい、在宅酸素療法を行いながらの生活を支援します。
具体的には以下のようなサポートを行います。
① 呼吸状態の観察とアセスメント
看護師は、利用者さんの呼吸状態を観察し、アセスメントを行います。
観察項目としては、以下のようなものがあります。
- 呼吸数、呼吸リズム
- 呼吸音(副雑音の有無)
- チアノーゼの有無
- 痰の量、性状
- 酸素飽和度(SpO2)
- 自覚症状(息切れ、疲労感など)
②酸素療法の管理と指導
看護師は、以下のような酸素療法の管理と指導を行います。
- HOTの管理
- 酸素濃縮器の操作方法の説明
- 流量の設定と確認
主治医が酸素の流量を指示します。活動後に酸素飽和度が下がる場合、状況に応じた流量の指示が出ることもあります。
息切れが強いからといって勝手に流量をあげてはいけません。
- フィルターの清掃方法の指導
- 携帯用ボンベの管理
- ボンベの残量確認
- ボンベの交換時期の管理
- 外出時の携帯方法の指導
- チューブ(カニューラ)の取り回しと管理の工夫
- チューブやリザーバーの交換時期の確認
- チューブの長さの調整
- チューブの固定方法の工夫
- 家屋内の配線の工夫
自宅は入院中とは環境が違っていろいろな物が床に置いてあることも多いです。つまずきにくい配線やチューブカバー・フックの使用などを提案します。
③入浴介助
入浴は、酸素の必要量が増加し、体力を消耗させます。
酸素チューブの装着で入浴を煩わしく感じる方は多いです。入浴回数が減り清潔を保ちにくくなったり、カニューラをはずして入って体への負担がかさむ方もおられます。
看護師が見守り、また必要時介助することで、負担をできる限り軽減することが可能です。
具体的には、更衣や洗体を一部でも介助することで入浴時間を短くしたり、動作による酸素飽和度の低下を最小限にします。入浴ができるか、シャワー浴や清拭で対応した方がよいかの判断も行います。
肩までつかると息苦しくなる時はお腹まで入るあるいはシャワーにする、シャワーチェアやシャンプーハットなどの検討など、安全な入浴方法を指導します。
④呼吸リハビリテーション
看護師は、利用者さんの状態に合わせた呼吸リハビリテーションを提案します。
看護師と一緒にリハビリを行うことで継続して取り組むことができます。
呼吸リハビリテーションには以下のものがあります。
- 口すぼめ呼吸
- 腹式呼吸
- 呼吸筋ストレッチ
⑤患者と家族への教育と支援
利用者さんやご家族への教育と支援も重要です。
- 禁煙指導
- 感染予防対策の指導
- 緊急時の対応方法の説明
機器の使用方法だけでなく、体の変化に自身で気づき、緊急時に慌てることなく対応できるよう指導します。また24時間いつでも相談に応じます。
上手な痰の喀出方法や、食事が摂れない時の栄養指導も行います。
⑥医療機関との連携
訪問看護師は、主治医や医療機関と連携を取りながら、状態を報告し、適切な対応を検討します。
在宅酸素療法の訪問看護の保険適用:介護保険と医療保険どっち?
在宅酸素療法をしている方への訪問看護は、介護保険と医療保険どちらが適用されるか、以下の条件によって異なります。
在宅酸素療法の介護保険適用条件
- 65歳以上で要介護認定を受けている方は介護保険が優先して適用となります。
- 40歳以上65歳未満でも、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎等)の方は介護保険を利用できます。
在宅酸素療法の医療保険適用条件
- 65歳以上で要介護認定を受けていない方と、64歳未満の方(上記介護保険適用外の方)は医療保険が適用されます。
在宅酸素療法を受けながら訪問看護を利用しない場合のリスクと対策
訪問看護を利用しない場合は、自己管理が重要になります。
機器の使用、体調の管理、入浴、緊急時の対応などを全てご自分やご家族の協力で行います。
在宅酸素療法導入時は訪問看護を利用し、慣れて自信をもって生活できていると主治医が判断した場合に一旦利用を休止する方もいます。
しかし次第に状態が悪化することはどうしても避けられません。自己管理や体調面での不安が大きくなったり、入浴がしんどくなってきたタイミングなどで再開できます。
まとめ
今回は、在宅酸素療法における訪問看護師の役割とサービス内容について解説しました。
訪問看護は、残された肺の機能を最大限に活かし、その人らしい生活が送れるよう、一人一人に合わせた治療 、支援、教育を行う医療チームの一員です。
専門的な知識を持った訪問看護師が、安全で効果的な在宅酸素療法を支援します。
在宅酸素療法を受けている方やそのご家族は、ぜひ訪問看護の利用を検討してみてください。
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