末期腎不全で透析療法も腎移植も行わない場合、末期腎不全で亡くなることになります。
その場合どのような経過をとるのでしょうか。今回のコラムでは透析を行わずに最期を迎える場合の実際について解説します。
目次
透析を行わないという意思決定はどのようになされるか
どのような場合に導入しないのか
厚労省は、「本人の尊厳を追求し,自分らしく最期まで生き、より良い最期を迎えるために人生の最終段階における医療とケアをすすめていくことが重要」と述べており本人の意思、意思決定能力を有さない場合には本人の推定意思を尊重します。
同時に意思決定をするのに十分な知識を持って決断できるよう、医療者は支援します。
在宅医療を行っている患者さんについては周辺の医療機関の状況を踏まえ、取りうる選択肢について説明します。
また透析を行わなかった場合の予後やリスクについて十分にお伝えします。
それらを以てしても、その意思が変わらない場合に透析の非導入を検討します。
しかし意識がしっかりされている方が末期腎不全となり尿毒症を経験すると、その苦痛から透析治療を希望するようになるのを多く経験します。
透析を導入するならシャント造設など事前に準備をして導入した方がその後の予後が良いため、導入しないという決断は慎重にしなければなりません。
とはいえ、非導入予定の方であっても透析をしたくなった場合は方針を変える権利があります。
自己決定能力がある患者さんの場合
自己決定能力がある患者さんが透析の非導入を選択した場合、医療チームは患者の意思と理由を聞きます。
患者が経験していない透析を拒否することはまれではなく、患者は当初は拒否しても定期的な通院を継続し最終的には透析を受け入れることも多いです。
患者・家族等と透析の非導入について合意した場合には、意思決定プロセスに準じて透析を見合わせますが、受診時に病状を確認し状況に応じて患者さんの苦痛を緩和する治療を開始します。
透析の見合わせに関する確認書を作成する場合もあります。
自己決定能力がない患者さんの場合
意思決定能力のない患者さんの家族等から透析見合わせの申し出を受けた場合、主治医は、家族等に患者が意思決定能力を有する時に表明した事前指示があるかどうかと理由を確認します。
透析見合わせの申し出が家族等の希望ではなく、本人の意思の代弁であることを判断するためです。
それらを確認できたら必要に応じて確認書を取得します。
透析非導入の実際
実際にどのくらいの患者さんが導入されずに亡くなるのか
実際にどのくらいの患者が透析を非導入で亡くなったのかを調査した文献をご紹介します。
2014年に死亡した方に関する調査では、腎不全を死因として報告された患者から維持透析患者を除いた患者を非導入患者と定義し、この年の非導入患者は85歳以上では5190人/年と推計されました。
同年の透析導入患者と非導入患者の和を非導入患者で除した非導入割合は年齢が上がるにつれて上昇しました。
95歳以上では男女とも約9割、90-94歳では7-8割、85-89歳では女性で約半分でした。
導入しなかった場合の経過
末期腎不全で透析導入をしないと肺水腫と尿毒症の懸念があります。
肺水腫になってしまうと肺から酸素を十分に取り入れることができなくなってしまい、呼吸が非常に苦しくなります。
透析非導入を決断した患者さんではこのような状況にならないよう、体液量が過剰とならないような管理をします。尿毒症の症状は食思不振、嘔気嘔吐、意識障害等です。
食事が食べられなくなり、次第に眠った状態の時間が増えていきます。
そのまま眠るように亡くなられる方が多いですが、その時期は人によって様々です。
多くは尿毒症となって2-3週間以内に亡くなります。
まとめ
筆者は在宅医療から慢性腎臓病の治療を担当した後に透析を開始され、入院療養で生涯を過ごされる患者さんも、在宅医療を継続しそのまま自宅で看取られた患者さんも診てきました。どちらが正解ということはなく、患者さんの価値観を尊重し治療に反映することが重要だと思います。
参照
日腎会誌 2019;61(2):91‒97.透析導入の見合わせ(非導入)割合の推計 若杉三奈子
いかがでしたでしょうか?
今回は「在宅医療の末期腎不全患者さんが透析非導入を選択するとき」について、ご説明させていただきました。
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