末期腎不全で行う透析には血液透析と腹膜透析があります。血液透析は基本的に週3回の通院が必要で、通院困難を理由に在宅医療を選択した方にとっては難しい選択となります。一方腹膜透析では状態が安定していれば月1-2回程度の通院で療養可能のため、在宅医療を行う場合があります。今回のコラムでは在宅医療で腹膜透析を行う場合の実際について解説します。

解説

1 腹膜透析とは

1−1どんな治療か
腹膜透析を開始するには、お腹の中(腹腔)に清潔なチューブを留置します。これは手術室の清潔な環境下で行う必要があり、入院が必要です。チューブが問題なく入ったら、チューブからお腹の中に専用の透析液を1.5~2Lほど入れます。液を入れたまま6-8時間程度過ごします。その間に毒素が血液から透析液へ移動します。時間になったら新しい透析液に交換します。これを一日に2-4回繰り返します。

1−2血液透析との比較
血液透析と比較すると通院回数は圧倒的に少ないです。血液透析が週に3回の通院を要するのに対し、腹膜透析では月1-2回程度の通院で続けることができます。
また、血液透析は透析クリニックに行けば看護師や技師が治療をしてくれますが、腹膜透析は原則的に患者さん自身か、家族が行う必要があります。
治療の頻度は原則的に毎日です。

1−3全ての人が取りうる選択肢とは言えない
腹膜透析は通院の頻度が少なく、在宅医療を行う患者さんに適している面もあります。
しかし、
・月に一度は病院へ通院できる身体状態であること
・通院手段があること
・または、近隣に腹膜透析を行っている訪問診療クリニックがあること
・治療を毎日行う家族がいること
などの条件が満たされなければ、在宅での腹膜透析は施行できません。
末期腎不全に至った場合にはどのような選択肢が取りうるのかを、主治医とよく話し合う必要があります。

2 在宅医療で腹膜透析を行った一例

患者さん

では私が在宅医療で担当している患者さんの例をご紹介します。

2−1どのような患者さん?
90歳男性、83歳の妻と二人くらしで子供はいない方。介護者は妻でした。
ご本人は認知症があり一人で通院ができません。

2−2それまでの治療は?
数年前に総合病院の腎臓内科で腹膜透析を導入され、その病院に月一回介護タクシーを使って通院していました。
しかし、ご本人と妻の体力低下によりいよいよ通院が難しくなってしまいました。

2−3在宅医療へ移行
末期腎不全では透析をやめると尿毒症になってしまうため、なんとかして透析を続ける必要がありました。
幸いこの地域では腹膜透析に対応できる訪問診療クリニックがあったため、総合病院からクリニックへ紹介となりました。

2−4生活はどう変わった?
訪問診療に移行したことで毎月の通院の必要がなくなりました。カテーテル感染症など合併症で調子が悪い時には一時的に総合病院へ入院します。転医後も紹介元と訪問診療クリニックで連携をとります。
通院の負担がなくなったことに、ご本人もご家族も大変満足されていました。腹膜透析は腹膜の劣化から永久に続けることはできません。しかし腹膜透析をやめて血液透析に移行するということは、ほぼ寝たきりとなったこの方の場合生涯入院での生活することを意味します。
ご本人、ご家族とも腹膜透析のみを続け、血液透析には移行しないこと(PD last※)を希望されました。

※透析医療の終末期のひとつの手段として、柔軟性が高く身体的負担の少ない腹膜透析を選択する方法をPDラストといいます。

まとめ

腹膜透析はいくつかの条件が整えば在宅医療でも継続することが可能です。血液透析と比較すると通院回数が少なくて済むのが最大のメリットと言えます。
しかし、それらの環境を整えるのは容易でない場合もあり末期腎不全に至る前に主治医とよく方針を相談しておくことが重要です。

参考文献:腎代替療法選択ガイド2020

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