「難病で酸素が必要でも自宅で生活できるの?」
「在宅酸素療法をしながら安全に過ごすためにはどんな管理が必要なの?」
在宅酸素療法を使用する難病患者さんやご家族に、このような心配を抱えている方はいませんか?
難病で呼吸機能に障害を抱える患者さんにとって、在宅酸素療法は住み慣れた地域で暮らすための大切な治療法です。
この記事では、難病患者さんが在宅酸素療法を行うときに気を付けたいポイントをお伝えします。
困ったときの対応も具体的に紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
難病患者さんの在宅酸素療法における安全管理のポイント
在宅酸素療法を導入する難病にはさまざまありますが、一例として次の疾患があります。
- 原発性肺高血圧症
- 特発性間質性肺炎
- パーキンソン病
在宅酸素療法の適応となる呼吸機能の低下は、難病による病状の進行によるものだけでなく、合併症が原因となることもあります。
難病患者さんの体内における酸素不足を補う在宅酸素療法。うまく付き合いながら安心して生活するためには、適切な管理が重要です。
どのような管理が必要なのか、具体的な内容をみていきましょう。
日常生活での工夫
在宅酸素療法を行いながら日常生活で気を付けたいポイントは、次のとおりです。
- 酸素濃縮器はガスコンロや流し台などの火気や水気を避けて設置する
- カニューラ(酸素を体内へ送るチューブ)の長さに配慮し、生活動線上に物を置かない
- 酸素吸入中は火気を避ける(タバコ、ライター、マッチなど)
- 料理するときはガスではなくIHコンロを使用する
- 入浴は酸素を吸いながら行う(カニューラやマスクを使用する)
外出時に確認しておきたいこと
難病患者さんが在宅酸素療法をしていても、外出することは可能です。
外出時には、酸素の供給を酸素濃縮器から酸素ボンベに切り替えます。
そこで重要なのが「酸素ボンベの残量」の確認です。
外出する時間と比例してボンベの酸素消費量も増えるため、余裕をもって考えておきましょう。
なかには「同調バルブ」という、患者さんが息を吸ったときにのみ酸素が吸入できる機械を使用している方もいます。使用可能かどうかは医師に相談してみてください。
また、在宅酸素療法をおこなっていても、バスや電車の公共交通機関を利用することができます。
ただ、飛行機を利用する場合は事前の手続きが必要です。あらかじめ航空会社に相談しておいてください。
緊急時の備え
難病患者さんの在宅酸素療法において忘れずにおこなっておきたいのが、災害や停電が起きたときの備えです。
- 酸素ボンベ:自宅予備の有無と残量の確認
- 酸素濃縮器のバッテリーの有無と残量の確認
- 緊急時の連絡先:訪問診療・訪問看護・在宅酸素事業者の連絡先
緊急時の連絡先は、目につきやすいところに貼っておきましょう。
また、災害で避難をするときには、玄関先に避難先の住所を貼っておくと在宅酸素事業者に酸素を届けてもらうことができます。
在宅酸素療法の管理で困ったときの対応
在宅酸素療法をしながら生活していると、ときには患者さんの体調不良で呼吸状態が悪くなったり、酸素濃縮器のトラブルが起きたりすることもあるでしょう。
トラブルのときにも落ち着いて行動できるように、困ったときの対応を知っておくと安心です。
酸素の吸入量に関すること
酸素の吸入量に関して、患者さんやご家族からよくある相談ごとと対応をみていきましょう。
息苦しくなったとき
焦ることでより息苦しさが増すことがあるため、落ち着いて呼吸を整えましょう。
そして訪問診療や訪問看護に連絡してください。医師や看護師が状況に応じて酸素流量の調整を指示したり、状態確認のために訪問したりします。
SpO2(血中酸素飽和度)の値が上がらないとき
動作のあとはSpO2の数値が低く出ることがあります。しばらく安静にして様子を見てみましょう。
SpO2の数値が上がらないときや、息苦しさを伴うときは早めに訪問診療や訪問看護に連絡してください。
酸素の吸入量は、医師が患者さんの状態に合わせて適切な量に調整しています。自己判断で量を増やすのは、身体に負担がかかり危険なのでやめましょう。
酸素濃縮器の異常
酸素濃縮器の様子がいつもと違うときには、故障している可能性があります。
故障かな?と思ったときのチェックポイントをまとめました。
- コンセントが外れていないか
- カニューラが折れていないか
- フィルタが詰まっていないか
- 酸素濃縮器とカニューラの接続がゆるんでいないか
酸素濃縮器の電源がつかない場合は、接続を酸素ボンベに変更し、早めに在宅酸素事業者へ連絡しましょう。
難病患者の在宅酸素管理を支えるチーム医療体制
難病患者さんが在宅酸素療法を安全に使用するためには、多職種連携やご家族のサポートも欠かせません。
在宅酸素療法と難病患者さんを支える職種とサポート内容を詳しくみていきましょう。
多職種連携
在宅酸素療法を支える医療サービスは「訪問診療」「訪問看護」「在宅酸素事業者」などです。
訪問診療や訪問看護では、難病患者さんの呼吸状態に合った酸素吸入量の調整や、呼吸リハビリテーション、日常生活で呼吸への負担を軽減するためのサポートを行っています。
在宅酸素事業者は、酸素濃縮器や酸素ボンベの使用方法の説明、定期的な点検、困りごとのフォローなどの役割を担っています。24時間対応で、夜間に酸素関連の機械で困ったときにもサポートしてくれる心強い存在です。
このように多職種が連携して、在宅酸素療法と付き合いながら生活される難病患者さんをサポートします。
ご家族へのサポート
難病患者さんが在宅酸素療法をしながら安心して生活するには、ご家族の支えが欠かせません。
在宅医療サービスでは、在宅酸素療法に対して恐怖心を抱かずに過ごせるよう、ご家族へのサポートも大切にしています。
病状の進行に対する不安を抱えながらの療養生活は、患者さんもご家族も心理的な負担が大きいものです。そんな中でも、在宅医療スタッフは定期的な訪問を通じて、その時々の状態に合わせた細やかなケアを提供し、患者さんとご家族に寄り添い続けます。
たとえば、ご家族が難病患者さんにできるサポートとして次のことをお伝えしています。
- 酸素濃縮器や酸素ボンベの適切な取り扱い
- 難病患者さんへの日常生活や外出時のサポート
- 難病患者さんの体調不良や呼吸状態が悪化したときの対応
在宅酸素療法に不安があるときには、在宅医療スタッフにいつでも相談してください。
まとめ
呼吸機能に障害がある難病患者さんが、自宅で安心して過ごせるように支えてくれる在宅酸素療法。
日常生活の工夫や災害時の備えで、酸素吸入をしながらでも希望に沿った生活に近づけるよう、在宅医療サービスがサポートします。
在宅医療サービスのなかでも、訪問看護は患者さんやご家族の身近な存在として在宅酸素療法をサポートします。サポート内容を詳しく紹介しているこちらの記事も、ぜひご覧ください。
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