重症筋無力症により、通院での治療に不安を感じていませんか?
症状の進行によって通院が難しくなってきた場合や、感染リスクを抑えながら治療を継続したい場合には、医師が自宅へ定期的に訪問して診療を行う「訪問診療」という選択肢があります。

この記事では、重症筋無力症の患者さんとご家族の不安を解消できるよう、訪問診療の特長とケアの内容をわかりやすく解説します。ぜひ最後まで読んで、訪問診療の導入の参考にしてください。

重症筋無力症の患者さんが訪問診療を利用する3つのメリット

重症筋無力症は、筋力の低下や疲れやすさが特徴の指定難病です。病気の進行に伴って、通院による身体的な負担を感じている方や、外出に不安を抱えている方は少なくありません。

在宅での治療を可能にする訪問診療には、以下の3つの大きなメリットがあります。

メリット1:通院の負担が大幅に軽減できる

重症筋無力症になると、筋肉を動かしづらい以外にも、疲れやすさや手足の脱力感が現れます。
病院への通院は、移動時の身体的負担や待ち時間での疲労など、患者さんにとって大きな負担となります。

訪問診療なら、医師が自宅に来てくれるため、通院による体力の消耗を避けることができ、その分の体力を療養に充てることができます。

メリット2:症状の早期発見・迅速な対応ができる

訪問診療では、医師が定期的に自宅で状態を確認するため、症状の変化を早期に発見し対応できます。

特に重症筋無力症では、急激に症状悪化(クリーゼ)が命に関わる危険な状態となります。日頃からの観察と管理により、クリーゼの予防や早期対処が可能です。

メリット3:住み慣れた自宅で医療的ケアが受けられる

ご自宅という安心できる環境で、診察や服薬調整などの医療ケアを受けることができます。

また、通院と比較すると不特定多数の人との接触が避けられ、感染リスクも軽減できます。

重症筋無力症の患者さんに訪問診療で行える治療

訪問診療でできる重症筋無力症の治療にはどのようなものがあるでしょうか。主な治療内容を紹介します。

症状の評価とモニタリング

重症筋無力症は、筋力低下や疲労感だけではなく、以下のような症状の変化も定期的に確認する必要があります。

  • 眼症状(眼瞼下垂・複視)
  • 球症状(嚥下障害・構音障害)
  • 呼吸に関連する筋力低下による息苦しさ

医師による定期的な診察で、症状の変化を把握し、治療方針を患者さんやご家族と相談しながら決定していきます。

薬物療法の調整

重症筋無力症の治療では、複数の薬剤を適切に管理することが重要です。

ステロイドと呼ばれる免疫を抑制する薬や、脳内のアセチルコリンの量を増やすコリンエステラーゼ阻害薬を用いて治療を行います。これらの薬が正しく効いているかをチェックすると同時に、必要に応じて量の調整をします。

これまで内服していた複数の科の薬を一括で処方してもらうことも可能です。

なお、がん治療に使用される免疫チェックポイント阻害薬との関連や、症状を悪化させる可能性のある薬剤(睡眠薬・一部の抗生物質など)についても、適切な管理を行っています。

血液検査

内服薬の血中濃度や副作用出現の観点から、定期的な検査が欠かせません。

訪問診療でも、血液検査を通院時と変わりなく行うことが可能です。また、肝機能や腎機能などの一般的な血液検査もできます。

急性増悪(クリーゼ)の予防と対応の指導

呼吸が困難になる危険な状態を防ぐため、以下のような前兆症状に注意が必要です。

  • 呼吸苦:息がしづらい、息苦しさを強く感じる
  • 嚥下困難:唾液が飲み込みづらい
  • 構音障害:言葉が話しづらい

これらの症状への対処方法や、感染症・ストレス管理などの予防策について、具体的な指導を行っています。

重症筋無力症の患者さんが訪問診療以外に利用できるサービス

在宅での療養をより充実したものにするため、訪問診療と併せて利用できるサービスがあります。

さまざまなサービスのうち2つを紹介します。

訪問看護

看護師が定期的に訪問し、日常的な健康管理や症状の観察、医療ケアを行います。

服薬管理や薬の副作用のモニタリング、患者さんとご家族の療養生活全般の相談にのり、必要な支援を提供します。

専門医との連携

重症筋無力症などの難病の患者さんは、これまで通院していた専門医と訪問診療を併用することで、より質の高い医療ケアを受けることができます。

※費用に関する注意点
訪問診療にかかる自己負担額は、難病受給者証の自己負担額の上限までです。ただし、診断書などの文書料や交通費、保険適用外の治療や検査を受けた場合は実費負担となるので、注意が必要です。

もし体調が急変したら?訪問診療での緊急時対応について

安心して在宅療養を続けるため、緊急時の備えを整えておくことが重要です。

訪問診療導入の際には、24時間対応可能かどうかの確認が必要です。日頃から急変時の対応について医師から指導を受け、ご家族で練習しておくことが重要です。

特に、クリーゼの状態は呼吸不全から人工呼吸器管理が必要となる可能性もあり、非常に危険です。
クリーゼが疑われた際には、すぐに訪問医に連絡し、指示を仰ぎましょう。

緊急時の対応や連絡先などは、誰が見てもわかりやすい場所に掲示しておくと、いざという時に慌てずに済むのでおすすめです。

まとめ:訪問診療の利用で住み慣れた環境での療養が可能です

重症筋無力症の患者さんは、訪問診療により自宅で専門的な医療的ケアを受けられます。医療と介護スタッフが連携してサポートすることで、患者さんやご家族に寄り添いながら、生活の質の向上にむけて伴走します。

訪問診療の導入を検討する場合は、主治医や病院のソーシャルワーカーに相談してみましょう。経験豊富な専門職が、ご家族の状況に合わせて適切なアドバイスを提供してくれるでしょう。

重症筋無力症の患者さんが自宅で過ごすときに利用できる医療サービスには「訪問看護」もあります。詳しい内容を解説しているこちらの記事もぜひご覧ください。

≫関連記事:「重症筋無力症の訪問看護ガイド|在宅療養の支援と生活の質を高めるポイント」

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