訪問診療をしていると、高齢者の方のむくみをよく見かけます。栄養状態の悪化や、日中にずっと座っていることが原因であることが多いです。むくみは冷えや下腿潰瘍に進展することも多く、悪化させないことがとても重要です。むくみの専門家である腎臓内科医が詳しく解説します。

目次
・むくみってどんな状態?むくみの原因は?在宅療養中の高齢者がむくみやすい理由
・むくみを放置するとどうなる?在宅ならではの問題点
・在宅でのむくみの治療法は?

 

むくみってどんな状態?むくみの原因は?在宅療養中の高齢者がむくみやすい理由

 

むくみとは?
むくみとは皮下組織(皮膚の下)に水がたまった状態で、足背や足のすねなどが腫れ、指で圧迫すると、その痕がなかなか戻らないような状態のことをいいます。また、重力に従って水がたまる傾向にあるため、座っていることが多ければ、下腿中心に。寝ていることが多いと背中がむくむこともあります。

 

在宅療養中の高齢者に特有の原因
食事面では、塩分摂取が多いこともむくみの原因となります。また、在宅医療を受けている高齢者には栄養がしっかり取れていない方も多いです。栄養不足によって血液中の蛋白量が減ってしまい、血管外に水分がしみだすようになります。むくみやすい原因は環境や生活習慣にも見られます。歩行などの運動をすると、筋肉がポンプとして働きむくみを改善してくれます。

しかし、在宅療養中の高齢者は活動性が低下し、日中に座りっぱなしとなることが多いです。ずっと座っていると、下腿にある血液の戻りが悪くなり、むくみやすくなってしまいます。これらの原因が重なり、在宅療養中の高齢者は下腿中心にむくみやすくなるのです。

 

そのほかの原因
貧血、甲状腺機能や腎機能の低下、心不全などの合併などによりむくむこともあります。高齢者のむくみが認められた時には、まずこれらの原因がないかをしっかり検査をすることが重要です。これらの原因精査に関しては、在宅診療でも対応ができます。むくみがある時には一度訪問医に相談してみてください。

 

むくみを放置するとどうなる?在宅ならではの問題点

むくんでいる部分は非常に皮膚がもろくなっています。そのためちょっとぶつけただけでも皮がむけ、ここから潰瘍(深い傷)に進展してしまうこともあります。むくんでいることで傷の治りが悪くなり難治性の潰瘍に進展してしまうことも多いです。下腿潰瘍の傷は非常に痛々しく、悪臭のある汁が出る場合もあります。入院療養中であれば、傷の処置をするのは手慣れた医療従事者ですが、在宅医療ではそうもいきません。治療には介護者の協力が不可欠です。

患者さんご本人や介護者であるご家族にとって、大きな潰瘍を抱えての暮らしは精神的な負担となりがちです。
また、在宅ではちょっとした傷から細菌感染を起こす機会も多いと考えられます。むくんでいる部位は炎症を起こしやすく、そこに細菌感染を合併すると蜂窩織炎(ほうかしきえん)という皮膚の炎症を引き起こします。悪化すると熱が出たり、強い痛みを伴ったりすることがあります。

 

在宅でのむくみの治療法は?

むくみを悪化させないために、早めに治療をしましょう。

 

生活する上での注意点。在宅でもできる圧迫法などの対処法
まず、塩分摂取量を減らすこと、就寝時に足を高めにして寝ることで、かるいむくみであれば改善することがあります。また、下腿のむくみは運動することで改善することも多いです。歩いたり、下腿の足踏みや足先を動かす運動を取り入れたりするだけでもよくなります。また、栄養状態が悪い時には食事量の見直しをしましょう。なかなか食事がとれないときには訪問診療で栄養補助飲料を処方してもらうことも可能です。

これらの方法でも良くならない時には、弾性ストッキングという皮下組織を圧迫できる靴下を使用することがあります。医療用のものもあるため、在宅診療での診察時に相談してみるのも良いでしょう。また、なかなかサイズが合わない場合や、靴下をはくことが難しい場合には弾性包帯を下から巻きあげていくことでむくみを予防できます。

薬での治療
貧血、甲状腺機能低下症などの際には薬による治療が優先します。腎不全や心不全に伴うむくみの時には利尿剤を使用して改善をはかります。この治療は主治医の先生にお任せしましょう。また、特に病気の合併がない場合にはむくみの改善を促す漢方薬を併用することもあります。いずれの治療も訪問診療で対応が可能です。むくみが悪化しないうちに対策をしていきましょう。

 

まとめ
在宅療養中の高齢者は低栄養や生活環境の影響により、むくみをきたすことが多くあります。むくみの原因を診断し、これに合った治療をすることで下腿潰瘍を予防することができます。下腿の圧迫法や漢方薬も治療の選択肢となります。下腿潰瘍は治療が難航することも多く、傷が深くなると、毎日の傷の処置が必要になります。これは、患者さんにもご家族にも大変負担になります。大切なご家族が痛々しい傷とともに生きていかねばならないことは、同居者にとっても耐えがたいことでしょう。なるべく早めに対応し、悪化しないようにしましょう。

訪問看護師から一言
先生、ご丁寧な解説をありがとうございます。むくみは目に見えてわかりやすいため、相談が特に多い症状ですね。むくみがひどいときはその状態を写真で撮ったり、その日の体調や日々の体重を記録したりしておくと病状を把握するのに役立ちます。
「いつもよりむくんでいる」は普段を把握しているからこその大切な気付き。「これくらいは…」と放置せず、訪問医に相談しましょう。

参考文献

日本皮膚科学会ガイドライン

洛和会病院医学雑誌

 

今回は「放っておくと下腿潰瘍に進行することも・・・。在宅介護で頻発するむくみ」について、ご説明させていただきました。お近くの在宅医療対応の医療機関はコチラから検索可能です。
https://zaitakuiryou.site/

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