COPDは段々と進行する病気で、初期には症状が軽くても段々と移動できる距離が短くなったり在宅酸素(HOT)が必要になったりすることがあります。
以前のコラムではCOPD(慢性塞性肺疾患)という病気の概要と、在宅医療を受けるメリットについて解説しました。
今回のコラムでは現役訪問医が在宅でのCOPD治療について具体例を交えて解説します。

目次
・自宅が診察室に?!定期的な訪問診療
・自宅でできる酸素吸入、在宅酸素療法
・在宅でできるリハビリ、訪問リハビリテーション
・病院より実践的、訪問管理栄養指導
・急に具合が悪くなったらどうする?!臨時往診とは

 

自宅が診察室に?!定期的な訪問診療

重症のCOPDでは歩くだけで息が切れるので、病院へ通うことも一苦労です。自宅からタクシーで通院することも不可能ではありませんが、毎回診察の度にタクシー通いとなると当然出費がかさみがちです。
在宅医療であれば病院に通うことなく医師の診察を受けることができ、薬も処方してもらえます。COPDだけではなく、高血圧、糖尿病、便秘、腰痛、風邪など、他の病気も同時にみてもらうことができるので、持病が多い患者さんこそ、在宅医療がおすすめです。

また、診察だけではなく、インフルエンザワクチン、新型コロナウイルスワクチン、肺炎球菌ワクチンなどの予防接種を受けることもできます。
感染症が流行っている時期に集団接種や外来受診をすることに不安を感じる方がいるかもしれませんが、自宅であれば安心して予防接種を受けることができます。

 

自宅でできる酸素吸入、在宅酸素療法

呼吸機能が低下して体に十分な酸素を取り込むことができなくなると、酸素吸入器が必要となります。
体が必要とする酸素の量は患者さんの病状によって異なり、吸入する酸素が多すぎても少なすぎても良くありません。
在宅医療では、患者さんの日常生活でどれくらい血中の酸素濃度が低下するかを医師や看護師、リハビリスタッフが確認します。

血液中の酸素飽和度を測定するモニターをつけた状態で、自宅の階段の上り下り、ベッドからトイレへの移動、入浴時の洗髪の動きなどをしてもらい、数値の変化を確認するのです。それにより自宅での生活に最適な酸素の量を決めることができます。

また、酸素チューブを常につけた状態で生活する場合、チューブの長さがどれくらい必要か、歩いた時に邪魔にならないようなチューブの配置はどうしたらよいかなどは病院やクリニックで話をしていてもなかなかわかりません。実際に患者さんの自宅にうかがうことでより適切な提案をすることができます。
こうしたきめ細かい対応は、一人一人の生活に寄り添う在宅医療だからこそできるものです。

 

在宅でできるリハビリ、訪問リハビリテーション

COPDでは動いた時に息がきれて苦しくなるので、活動量が低下します。すると、筋力低下や体重減少が生じ、それにより呼吸機能が低下して、ますます苦しくなるという悪循環に陥ります。
そのため、リハビリテーションをすることで筋力や運動能力の維持、向上をはかり、息苦しさを軽減し、患者さんが自分らしい趣味や活動をする能力、意欲を保つことを目指します。

自宅に閉じこもりがちだった患者さんが、訪問リハビリテーションによって筋力を向上させ、散歩や庭いじりをすることができるようになることもあります。

 

病院より実践的、訪問管理栄養指導

COPDが悪化してくると、首や肩周り、背中などたくさんの筋肉を使ってなんとかがんばって呼吸をします(全力疾走した後に全身でゼーハー息を切らしているところを想像してください)。このため、健常の人に比べてより多くのエネルギーを必要とします。
また、近年ではCOPDは全身の炎症疾患と考えられており、活発になった白血球やホルモンバランスの乱れによる影響で食欲低下や体重減少が生じます。

体重減少は死亡率の上昇につながると考えられており、栄養療法を行い、体重を維持することはとても重要です。

訪問栄養食事指導では、栄養管理士が患者さんの自宅を直接訪問して、食事に関する指導を行います。
普段はどのような食事をしているか、誰が調理をするか、好き嫌いはあるか、宅食サービスや栄養補助食品を利用することができるか、買い物はどこへどのくらいの頻度で行くかなどをしっかり聴取した上で、患者さんの実生活に合わせた指導をします。

生活リズム、経済力、介護力などは患者さんによって異なるので、単に料理のレシピを教えるだけではなく、実現可能な食事内容、食事環境を提案します。病院における栄養指導よりも一歩踏み込んだ指導が受けられます。

 

急に具合が悪くなったらどうする?!臨時往診とは

COPDをはじめとした慢性疾患では、突然病状が悪化することがあります。
急な発熱、息苦しさなどで病院を受診できないほど体がつらいこともあるでしょう。在宅医療ではそのような場合、医師が患者さんの自宅を訪れて臨時往診をします。自宅にいながら、採血、点滴、酸素投与、痰吸引などの医療行為も受けられます。

病状が安定している時の定期的な診察だけでなく、突然具合が悪くなった時の臨時往診も、両方受けることができます。

 

まとめ
在宅医療では患者さん一人一人の生活に寄り添った、きめ細かい医療を受けることができます。病院へ通院することが難しくなってきたCOPDの患者さんは、在宅医療を検討してもよいかもしれません。

Ns(以下N)
「先生解説ありがとうございました。COPDの患者さんは、自宅の中での移動すら大変なこともあると思います。」
Dr(以下D)
「そうですね、家の中のちょっとした段差、すぐそこのものを取ることができないもどかしさなど…家の中にお邪魔しないとわからないこともたくさんあります。」
N「本人や家族にしかわからない、ちょっとした不自由、がたくさんありますよね。」
D「そうです。自宅でのそんな『小さな不自由』を少しでも減らして、より安全安楽に生活ができるようサポートしていくのが私たちの役目です。」
N「小さなことでも、一緒に考えていけるといいですね。」

 

今回は「どんな風に治療するの?COPD患者さんへの在宅医療の実際」について、ご説明させていただきました。お近くの在宅医療対応の医療機関はコチラから検索可能です。
https://zaitakuiryou.site/

 

 

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