小児科訪問診療、医療的ケア児に関わる在宅医療の実際

以前のコラムでは、日常的に痰の吸引など医療的なケアが必要なお子さん(医療的ケア児)が増えていること、日常生活のさまざまな面で負担がかかっていること、法改正など少しずつ支援する環境が整い始めていることについてまとめました。

今回は医療的ケア児における在宅医療との関わり方について、現役小児科医が経験を元に解説します。

目次
・在宅医療でどんなことができるの?
・外来診療にはない在宅医療ならではの強み
・在宅医療でできないことはどんなこと?
・病院との連携も大切です

在宅医療でどんなことができるの?

一般的に医療的ケア児に訪問医が行っている医療行為を提示します。実際に対応可能かどうかは医療機関によって異なります。訪問診療を依頼する医療機関にご確認ください。

 

・薬の処方:便秘薬やてんかんのお薬など、多くのお薬は在宅医療で対応できます。風邪を引いてしまったり、消化が悪くなったときなど体調不良時の相談も可能です。

 

・医療器具の交換・管理:胃ろうや気管カニューレ、膀胱留置カテーテルといった医療器具の交換や管理が可能です。

・血液検査や尿検査:医療機関と同じように血液検査や尿検査を行うことができます。

 

・予防接種:定期接種はもちろん、インフルエンザワクチンなど任意接種のワクチンも自宅で受けることが可能です。地域によって少し対応が異なりますが、きょうだい児※の接種も相談できます。

・成長や発達の評価:発達段階の評価や発達段階に合わせた支援の相談が可能です。

 

※きょうだい児とは、障がいのある子どもの兄弟姉妹のこと。

今まで通院で対応していたことの多くは、在宅医療でも対応可能です。特に、医療器具の交換や定期的なお薬の処方は通院の回数も多いため、在宅医療を利用することで確実に負担は減ります。

外来診療にはない在宅医療ならではの強み

① 通院の必要がない
医療的ケア児とご家族にとって病院への通院は大きな負担です。医療器具は大きく、重量もあるものが多いです。移動中に痰の吸引が必要なことも少なくありません。また、長距離の移動はお子さんの負担になり、体調を崩してしまった経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。在宅医療では通院が不要になります。

② 実生活で困っていることの相談がしやすい
医療者がご自宅に訪問するため、医療器具の置き場所や気温や湿度といった生活環境など、普段は伝えにくいことも相談がしやすくなります。医療者にとっても、実際の生活がわかることで、より適切な医療やサポートにつなげやすいというメリットがあります。

③  きょうだい児に対するケアができる
きょうだい児がおられる家庭では、通院時に留守番をさせたり預け先を確保せざるを得ない場合も多々あろうかと思われます。在宅医療ではきょうだい児もご自宅で一緒にいられます。いわゆるきょうだい児は、少し頑張り過ぎていたり、不安や寂しさを感じていたりすることが少なくないと報告されています[1]。きょうだい児の体調や心理面のケアもご相談が可能です。

在宅医療でできないことはどんなこと?

一般的な診療の多くは在宅医療で対応できますが、在宅での検査や医療的な処置には限界もあります。

レントゲンや脳波など大きな機械が必要な検査、手術や入院が必要な病態などは規模の大きな病院での対応が必要です。体調不良時には往診を依頼することもできますが、緊急性が高い病態の対応は難しいため、救急車の要請が必要になることもあります。

また、在宅医の中で小児科医は多くないため、一部の予防接種や成長発達の相談は対応できない場合も多いのが現状です。

病院との連携も大切です

医療的ケア児の多くは、在宅医療が導入されても、入院ができる病院に定期的に通院されています。体調不良時の対応はもちろん、ご家族の休息やきょうだい児のイベント出席のためのレスパイト入院も相談できます。お子さんにとってより良い環境を作っていくために、医療機関同士が連携していくことはとても大切です。在宅医を中心にお子さんの様子やご家庭のニーズに合わせて支援の調整をしていくことも可能です[2]。

 

まとめ
医療的ケア児にとって在宅医療は、日常的なケアから小児期に必要な予防接種など幅広く相談ができる支援の一つです。必ずしも小児科医とは限らないため、全てが対応可能というわけではありませんが、ご家庭の負担を軽減し、大きな助けになるはずです

看護師(以下N)「きょうだい児のケアまでというのは、まさに在宅だからこそですよね」
医師(以下D)「そうですね。最初は遠くから診察を見ていたきょうだいが、慣れてくると本人(医療的ケア児)の様子を報告してくれたり、自分のことを色々話してくれたりもするんですよ」
N「きょうだいの成長も一緒に喜べる。在宅の良いところですね」
D「本人はもちろん、家族へのサポートを大切にしています。ちょっとした悩みや疑問を相談できる人として、訪問診療を利用するのも良いと思います」

参考文献
[1] 黒岩めぐみら 病気や障害をもつ子どものきょうだい児への支援に関する
研究の動向と課題. 群馬保健学研究 2019; 40: 1-7
[2] 南條浩輝 医療的ケア児の在宅医療 ー 一般小児病棟と在宅の連携. 小児内科 2019; 51(5): 747-750

 

今回は「医療的ケア児と在宅医療②」について、ご説明させていただきました。お近くの在宅医療対応の医療機関はコチラから検索可能です。
https://zaitakuiryou.site/

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