痛みを取り去ってもっと楽に生活したい！動けるようになれば遠出もできるのに。年齢を重ねるごとに体のあちこちが痛み、そして気分まで落ち込んでしまいます。

痛みを取り去りたいのに病院やクリニックに出向くこともできない、だって痛いんですもの…。このような高齢の方は少なくありません。

今回は訪問診療を行う整形外科専門医が、ご自宅で受けられる注射治療をご紹介します。

 

関節の隙間に打つ！ヒアルロン酸注射(主に膝関節)

在宅で効果を発揮するのが、変形性膝関節症に対するヒアルロン酸注射です。ヒアルロン酸は関節内で生み出される「滑りを良くするアブラ」です。痛みが強い方には局所麻酔薬やステロイド薬を混ぜて打つこともあります。即効性はありませんが、月に2回継続的に行うことで徐々に痛みが軽減していきます。

変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨が擦り減ることで骨がむき出しになり痛みが生じる病気です。加齢や体重が増えることでどんどん進行し、ちょっとした段差でも激痛になるため外出が億劫になってしまいます。

在宅医療でヒアルロン注射を受ける際の、ご自宅での準備
膝の外側でお皿の骨のやや上から打ちます。足を乗せることができる台があるとよいです。また、注射の当日は湯舟につかることは避けシャワーのみを推奨する医師が多いです。デイサービスや訪問入浴とは別日がよいでしょう。

腰痛にも下肢の痛みにも効く！仙骨硬膜外ブロック注射

「立ち上がるときに腰やふとももが痛くてたまらない！」
「家を出るまでは良いんだけど100ｍくらいでふくらはぎが痛くなってスーパーまで辿り着けない！」

脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)によって生じる痛みですね。「背骨の神経が障害される」ことを指し、椎間板ヘルニアやすべり症を含みます。
椎間板ヘルニアとは椎間板が飛び出て神経に触れることです。すべり症は背骨のブロックがずれ神経が上下の骨に挟まれることです。狭い意味での脊柱管狭窄症は骨や靭帯が膨らみ神経の通り道が狭くなることです。

在宅医療で仙骨硬膜外ブロック注射を受ける際の、ご自宅での準備
仙骨(しっぽの骨)の骨の隙間に長い針を刺入し、神経の周りに局所麻酔薬や消炎鎮痛剤を撒く注射です。背中の注射ですので、うつ伏せになりお尻をやや突き上げた姿勢で行います。掛け布団などをお借りし丸めてお腹の下で抱えます。注射後約30分ほど立ち上がらずに休んでいただきますので、当日ご家族やヘルパーが居ることが望ましいです。

痛む神経に直接！坐骨神経ブロック注射

お尻からふとももやふくらはぎにかけて痛い！足を引きずって歩いてしまう。
これが坐骨神経痛です。お尻に走っている太い坐骨神経が障害され、痛みが強いと歩くことが困難な場合もあります。椎間板ヘルニアや梨状筋症候群で誘発されます。坐骨神経ブロック注射は神経の周囲に直接局所麻酔薬を撒くため即効性が得られやすい注射です。

今すぐ取り去りたいその痛みに！トリガーポイントブロック注射

局所麻酔薬や消炎鎮痛剤を比較的浅い部位に打つ、即効性が得られやすい注射です。在宅で頻度が高いのは筋肉が原因の腰痛や仙腸関節炎などです。肩こりなどにも行われることがあります。

看護師(以下N)「高齢者にとって痛みをコントロールすることは、生活の質の向上につながりますね」

医師(以下D)「普段あまり外に出ない方でも、痛みがあることは自宅での転倒にもつながります」

N「痛みが緩和されたことで行動の範囲が広がり、自宅でもできることが増え、笑顔も増えた患者さんがいました」

D「それは嬉しいですね。在宅でも、本人と家族の不安がないよう、医師が事前にしっかりと説明を行います。まずは相談してみてください」

参考文献
日臨麻会誌 Vol.34 ペインクリニックにおける神経ブロック療法　トリガーポイント注射　森本昌宏　他
日本臨床麻酔学会 vol.34

今回は「整形外科に行けなくても大丈夫！在宅で行える痛みの注射治療」について、ご説明させていただきました。
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