精神科の治療を受けている方も在宅医療が受けられる環境が増えてきています。しかし、病院やクリニックの限られた診察時間では、在宅医療について話を聞く機会は少ないかもしれません。

今回は、精神科病院で勤務しており、普段から患者さんを在宅医療へ紹介している現役精神科医が、在宅医療をおすすめする場合について解説します。

高齢で通院が困難な方は在宅医療がおすすめ

精神科は高齢となっても薬物療法の継続が重要な疾患が多いです。精神科に限りませんが、認知機能が低下したり、介護度が上がったりして通院が難しくなってきた場合は在宅医療がおすすめです。
特に家族も高齢であったり、遠方にいたりする場合は病院に連れて行くのも難しいため、在宅医療が向いていると言えるでしょう。

 

病院への通院に拒否的な精神疾患患者にも在宅医療はおすすめ

統合失調症や認知症を始めとした精神疾患を持つ患者さんは、病気の特徴から病識(自分が病気であるという自覚)が持てないことがあります。そのため、通院の必要性が理解できなかったり、通院に対して拒否的になったりすることがあります。そのような場合にも在宅医療はおすすめです。在宅医療では、病院に行かずに医師が自宅や施設に来てくれるため、通院に拒否的な患者さんでも治療が続けやすいです。

また、精神科病院に入院したことのある患者さんの中には、過去の経験から病院を受診するとすぐに入院させられるのではといった不安が強い方もいらっしゃいます。そのような患者さんにも在宅医療は向いています。もちろん症状が悪く入院が必要な場合もありますが、在宅医療ではいきなり入院させられるといった心配がないため、患者さんにとって心理的な抵抗は少ない可能性があります。

 

家族の話も聞いてもらいたい場合は在宅医療がおすすめ

精神科診療では家族からの情報も重要ですが、外来診察では本人、家族それぞれから十分に話を聞く時間がありません。患者さんの受診に付き添っていて、もう少し家族の話も聞いて欲しい、と感じたことがある方も多いのではないでしょうか。在宅医療では医療者が自宅に来てくれるため、家族と話をする時間も取りやすいことが多いです。

 

グループホーム、老人保健施設などの施設に入所している方にもおすすめ

精神科の患者さんの中には、社会復帰を目指して自宅ではなくグループホームへ入居する方もいます。また、高齢となり老人保健施設などの施設へ入所することもあります。そのようなタイミングで施設への訪問診療という形で在宅医療へ移行することも多いです。施設との連携が取れているクリニックに訪問診療に来てもらえると、情報の共有もしやすいため、より細やかな医療が受けられます。

 

在宅医療を受けてみたくなったら

在宅医療を受けたい場合は、現在通院中の方は、まずはじめに主治医と相談してみましょう。普段から紹介している在宅医療クリニックを紹介してもらったり、これまでの治療状況について紹介状を書いてもらったりすることで、よりスムーズに治療が受けられます。

まだ受診できていない患者さんは、地域の精神保健福祉課や地域包括支援センター、ケアマネージャーに相談すると在宅医療についての情報を教えてもらうことができます。

 

 

看護師(以下N)「精神疾患を持つ患者さんは、そもそも受診ができていないというケースも少なくないですよね」

医師(以下D)「はい。本人だけでなく、家族など本人を支える方のサポートも重要ですね」

N「本人の生活の場や支えるご家族のことなど、そういった背景を把握しやすいのも訪問診療の良さになるでしょうか」

D「その通りです。精神科では特にですが、まずは医療者が患者さんの生活の場にお邪魔し、じっくりお話をする。そこから継続的なフォローにつなげていくことを大切にしています。」

 

 

今回は「精神科の在宅医療がおすすめなのはどんな人？」について、ご説明させていただきました。
お近くの在宅医療対応の医療機関はコチラから検索可能です。
https://zaitakuiryou.site/