訪問診療で診療可能。眼科医が解説する白内障のおはなし

「今まではクリニックで診察、治療をしていたが、今後は自宅で訪問診療を受けることになった。眼科では白内障があると診断されており、目薬で経過観察をしていた。」

このような状況の方を今までに何人も見てきました。自宅や施設での検査・治療が可能なのかなどを心配に思う方は少なくありません。

訪問診療では医療を自宅あるいは施設の患者さんに提供します。あまり知られていないのですが、一部の眼科の診察や治療を訪問診療で行うことができます。眼科訪問診療では視力検査など自宅でもできる検査を行い、治療に必要な目薬を処方することができます。もし詳しい検査や目薬以外の治療が必要であれば、クリニックなど医療機関に紹介することがあります。一方で、今まで自覚症状がなく、自宅や施設で過ごしていた時に初めて、かすみの症状や見えづらさを訴え、白内障と診断される方もいらっしゃいます。

そこで、この記事では眼科訪問診療での白内障の診断、診察とその治療タイミングについて訪問診療に精通した眼科医師が解説します。

白内障とは

白内障は加齢などが原因となり、水晶体が濁った状態を指します。この水晶体はカメラのレンズと似た役割をしています。レンズが古くなると写真がぼやけて見えづらくなるように、白内障では視界がぼやけたり、まぶしさを感じたりします。さらに、白内障が進行すると視力が下がり、放っておくと最終的には失明してしまうこともあります。

見えづらさの症状があれば白内障の有無と進行の確認のため、細隙灯顕微鏡という顕微鏡を用いて判断します。白内障があれば治療として目薬と手術を選択します。ガイドラインでは目薬による治療を積極的には推奨していません。そのため、初期の頃は目薬で対応する場合がありますが、白内障の根本的な治療は手術となります。

訪問診療で白内障を見ることはできる？

クリニックなど医療機関の診察では、白内障があるかどうか、あるいは白内障が進行しているかどうかを判断しています。そして、白内障の程度が強かったり、自覚症状が強かったりすれば手術へご案内することがあります。眼科の訪問診療では医療機関と全く同じ検査をすることはできませんが、大まかにその状態を診察することができます。そして、このまま経過観察で良いのか、あるいは手術治療が必要なのかを判断します。経過観察であれば眼科訪問診療を続けますし、手術治療が必要であれば手術可能な眼科医療機関へと紹介します。このように、自宅であっても訪問診療を利用すれば、適切な対応を取ることができます。

白内障を手術するタイミングで知って欲しい3つのこと

眼科の訪問診療をしていると、「白内障の手術をするタイミングが分からない」と言われることがあります。そこで、白内障の手術をするタイミングは3つあると説明しています。

①    まぶしさ、見えづらさの自覚症状が強く、日常生活に支障が出ている場合
②    自覚症状がなくても視力が大きく低下している場合
③    ①や②がなくても白内障の手術をした方が良いと眼科医が判断した場合(閉塞隅角緑内障など)

この3つのいずれかが当てはまれば手術の適応になりうると説明しています。白内障があっても症状がなければ手術しないこともありますし、白内障が徐々に進行したためにあまり自覚症状がない場合であっても、手術後には物がよく見えるようになる人もいます。このように、白内障の手術治療のタイミングを知っておくことで、白内障の経過観察をより適切に行うことができる場合があります。

眼科訪問診療は医療機関と同じ内容の診察はできませんが、眼科訪問診療であっても経過観察と治療の適応判断と方針決定については十分対応可能です。眼科訪問診療を行う施設は限られていますが、ご自宅や施設などで利用できるのであれば活用してみてはいかがでしょうか。この記事がその第一歩となれば幸いです。

参考URL
公益財団法人日本眼科学会「白内障手術」

関連記事
眼科通院ができなくなっても大丈夫！？眼科訪問診療でできること

 

今回は「訪問診療で白内障を診ることができるのか」について、ご説明させていただきました。お近くの在宅医療対応の医療機関はコチラから検索可能です。
https://zaitakuiryou.site/