腹水とは、肝硬変やがんなどの病気が原因でお腹に水がたまる状態のことです。
腹水が悪化するとお腹が張って痛みがでたり、少し歩いただけで息が切れたりすることで通院が困難となり、在宅診療に移行することがあります。

今回のコラムでは、消化器科出身の現役在宅診療医が、腹水の原因や症状、そして在宅で行う腹水治療についてわかりやすく解説します。

目次
・在宅医療で腹水を診る頻度が高い病気は?
・腹水がたまるとどうなるの?主な症状を解説
・在宅でもできる腹水治療は?
・腹水の患者さんが在宅診療を受けるメリット

 

在宅医療で腹水を診る頻度が高い病気は?

まず、在宅医療に移行する頻度が高い病気、病態について解説します。

 

悪性疾患ではないものの徐々に進行する病気、肝硬変
肝硬変とは、肝臓に慢性的な炎症が生じた結果、文字通り肝臓が硬く変わる病気です。
肝硬変になると、腸から肝臓に流入する血液が滞ったり、体に必要な蛋白質を肝臓で合成できなくなったりします。この結果、体内で血管から水分が漏れ出て腹水がたまります。

様々ながんが原因となる、がん性腹水
がんが原因でたまる腹水を、がん性腹水といいます。
お腹にちらばったがん細胞が炎症をおこす、がん細胞がリンパ管をつまらせる、がんによる低栄養など、複数の原因で腹水が生じます。
原因となるがんは、胃がん、大腸がん、膵がん、卵巣がんなど様々です。

腹水がたまるとどうなるの?主な症状を解説

腹水が少量であればあまり症状は目立ちません。
しかし、腹水の量が増えると、以下の症状がおきます。

 

・強い倦怠感や疲労感
・おなかの張りによる痛み
・肺が圧迫されることでおきる息苦しさ
・胃腸が圧迫されることによる食欲低下や吐き気

 

在宅でもできる腹水治療は?

肝硬変に対する肝臓移植、がんに対する抗がん剤といった治療を除き、腹水に対する治療は対症療法になります。
すなわち、「腹水を治す」のではなく薬や処置によって「腹水を減らしてコントロールする」というイメージです。
以下の治療は、病院と同様に在宅でも行うことができます。

 

利尿薬(りにょうやく)
利尿薬とは、おしっこの量を増やす薬のことです。利尿薬を投与することで、腹水として体に余分にたまった水分をおしっことして排泄します。
初期の肝硬変であれば、利尿薬をうまく調整することで腹水がなくなることもあります。
がん性腹水に対しても利尿薬を使用することがありますが、非がん性腹水に比べると利尿薬の効果は限定的です。
利尿薬は腹水を減らす効果がありますが、脱水や腎不全などのリスクがあるため、体の状態を注意深くみながら用量を調整する必要があります。

腹水ドレナージ
お腹に針をさしてチューブをつなぎ、体の外に腹水を排出する治療法です。排出した分だけ腹水は減るので、お腹の張りや痛みに対して即効性があります。
一方で、腹水とともに体に必要な蛋白質が流出するために低栄養が進行したり、脱水による腎機能低下や血圧低下をおこしたりするリスクがあります。したがって、腹水の抜きすぎにも注意が必要です。

腹水の患者さんが在宅診療を受けるメリット

利尿薬や腹水ドレナージでもコントロールが困難な腹水を、難治性腹水(なんじせいふくすい)と言います。
難治性腹水の状態では、お腹の張りや痛み、強い倦怠感や疲労感などの症状があるため通院をするだけでもかなり負担が大きいです。
在宅診療であれば、1〜2週間に1回の頻度で医師や看護師が自宅を訪問し、体の状態をみながらこまめに利尿薬を調整したり、必要に応じて腹水ドレナージをしたりすることができます。

 

また、肝硬変やがんの患者さんは腹水以外の症状を抱えていることが多く、感染症にかかると重症化のリスクがあります。
在宅診療では腹水に対する治療だけではなく、夜間の急な発熱やがんに対する痛みのコントロールもまとめて診てもらうことができます。
病気が進行していろいろな症状を抱えている患者さんほど、すぐに対応してくれるかかりつけ医を持つことで安心して日常を過ごすことができるでしょう。

 

まとめ肝硬変やがんなどが原因で腹水がたまることがあります。腹水が多量になると、お腹の張りや痛み、強い倦怠感や息苦しさなどの症状がでてくるために通院が難しくなります。
在宅診療では医師や看護師が患者さんの自宅を訪れ、体の状態に合わせて利尿薬を調整したり、つらいお腹の張りを軽減するために腹水ドレナージなどの処置をしたりすることが可能です。
通院が大変になってきた腹水の患者さんは、在宅診療を検討してもよいかもしれません。

 

 

看護師(以下N)「在宅でも腹水治療ができる、というと驚かれる患者さんやご家族も多いです」

医師(以下D)「患者さんの状態をみながら、状況によっては腹水ドレナージを行います」

N「病院とは環境が異なりますが、自宅にあるものを使って、安全に腹水ドレナージができることも知ってほしいですね」

D「はい。もちろん事前にしっかりと説明し、安心していただいた上で実施します。通院が辛くなってきた方は訪問診療を検討してみてほしいですね」

 

 

今回は「どうやるの?在宅で行う腹水治療」について、ご説明させていただきました。
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